12月19日、「みんなの図書館おとなの夜学」の第1回となる「岐阜においしいものってあるの?-長良川の食と職-」を開催しました。
図書館とNPO法人ORGANの協働事業として、ふだん岐阜に住んでいながらほとんど知らない、岐阜が育んできた歴史や生活文化を、さまざまなジャンルにおける、その道を邁進している人同士が対談し、動画を使って岐阜の素晴らしさを外に向けて発信していく、というイベントです。
第1回目となるパネリストは岐阜の美味しいものの代表格であり、世界農業遺産にも指定された鮎を扱うお二人。
一人は岐阜の老舗物産店「泉屋物産店」の五代目社長であり、骨まで食べられる鮎の塩焼きを求めて全国から客が訪れるという「川原町泉屋」も手掛ける泉善七さん。もう一人は鵜舟の船頭であり、また長良川漁船「結の舟」の代表として長良川の風景や伝統漁法を守ることに従事している平工顕太郎さん。
そして、このお二人の対談の進行を務めたのはORGANの蒲勇介さん。
最初に、平工さんから映像を交えて長良川について、そして鮎について紹介がありました。
長良川で見られるセミの孵化の様子や台風シーズンの長良川の漁について、モズクガニ漁や幻の魚といわれるアユカケなどの写真、「結の舟」の活動風景を見せつつ、長良川の1年の様子を映像で紹介する平工さん。
その他にも天然鮎の種付けについてなど、普段一般には知られていないような活動についても紹介がありました。
若者世代に長良川・鮎をめぐる文化を継承してもらうために、若いながらも川漁師という仕事に飛び込んで、従来のやり方ではなく時代に合ったやり方で勝負しようと試みる平工さんは「若い人がこれからこの社会に入りやすくするための足跡をつくる」とおっしゃるなど、地域文化に対する想いを穏やかに、そして力強く語られました。
続いて泉さんは自身でご用意された資料をもとに、お店で出されている鮎の熟れ寿しと魚醤についてお話をされました。
熟れ寿しと魚醤の起源は東南アジアにあり、魚醤は塩のみで発酵させる調味料であるのに対し、熟れ寿しは塩と発酵のスターターとなる米を用い、魚をそのまま食べるという日本との違いなどを最初に説明されました。
養殖鮎で滋賀県の鮒寿しと同様の「本熟れ」という方法で作ったところ形もなく溶けたという苦労話や、熟れ寿しで使う鮎は特定の鮎に限定していること、お店で出している鮎ピザの主要調味料となっている「鮎の白熟クリーム」や「あゆチョビソース」の製作秘話、ピザ窯導入に至るまでなどをお話いただきました。
川は鮎の「テロワール」(ワイン業界の用語で生育環境のこと)である、という泉さんの言葉が印象的でした。
お二人のお話のあとに、蒲さんからお二人に対し、仕事のことや鮎・長良川をめぐる食文化について、今後に向けて考えていることなどを質問して、お二人が答えていきました。
ここでも鮎の鮮度や価格、漁域について、普段知ることのない話を聞くことができました。
最後にお二人がご用意してきた、鮎の赤煮、白熟クリーム、鮎の熟れ寿し、守口漬を参加者のみなさんと試食。お酒を嗜む方には堪らない味です。
岐阜に住んでいてもなかなか食する機会がない味に、みなさん美味しそうに召し上がっていました。
イベント後に参加者の皆さまからいただいたアンケートでは「岐阜に住んでいて知らないことを知る機会になった」「鮎や鮎文化に対するお二人の熱い想いが伝わった」「長良川の文化を守り継いでいく大切さが分かった」「泉屋さんで食べたい!」「平工さんのお話にうるっときた」など、「長良川の食と職」について何かしら得たようで、「みんなの図書館おとなの夜学」を開催した意義が参加した皆様に伝わったようでした。
来年1月4日に開催する第2回の「岐阜で育って世界で戦えるの?-長良川の育む感受性-」は、アーティストの日比野克彦さんと日本画家の神戸智行さんの対談です!