平成28年12月20日、みんなの図書館おとなの夜学を開催しました。昨年からスタートしたこのイベント、今年も第2期に突入しました。私たちの暮らす岐阜のまちがこれまで育んできた文化や歴史を図書館から発信しよう、という企画です。今回も「岐阜にいながら知らなかった岐阜のこと」、興味深い岐阜のお話を聞くことができました。
今回のテーマは、「岐阜の鵜飼は世界のUKAI!?」-長良川鵜飼を継ぐ男VS鵜飼の全てを知る男-。ゲストは長良川温泉旅館「鵜匠の家すぎ山」の専務、杉山貴紀さんと、長良川鵜飼に魅せられたことをきっかけに全国の鵜飼の開催場所を巡り、鵜飼の魅力を伝える活動をされている鵜飼愛好家の森松誠二さん。お二人の対談という形で、話が展開していきました。
5月から10月までの間、長良川にはいつも当たり前のように鵜飼漁の光景が見られます。鵜飼は長良川で1300年以上前から行われている伝統漁法です。明治23年からは宮内庁に属し、宮内庁式部職鵜匠として世襲で受け継がれてきました。長良川の鵜飼漁の技術は国重要無形民俗文化財にも指定されています。杉山さんは直接鵜飼漁をされるわけではありませんが、鵜匠を取りまとめる事務方の仕事をされていて、代々伝統ある長良川鵜飼を守ってこられました。杉山さんは最初に、当日集まった人々を前に、感謝の言葉を述べられました。鵜飼いの話に興味を持ち、会場に足を運んでくださるお客さんがいるからこそ、伝統ある鵜飼いが今日まで続いていること。世襲で式部職鵜匠として活動されてきた杉山さんのお話される言葉の端々には、伝統を守っていくことの難しさとその責任の重さのようなものを感じました。
一方、森松さんは長良川鵜飼を見てその魅力にはまり、全国の鵜飼を観覧してその魅力を伝える活動をされてきました。全国には現在13か所の鵜飼漁が行われている地域があります。それぞれの場所に特徴があり、「鵜飼」とひとくくりにしてしまえるほど単純なものではありません。「漁」である生計を立てるすべであるという側面と、「人に見せる文化」である側面の両方を持ち合わせる鵜飼。地域によっては漁というよりも祭りのときにだけ行われるエンターテイメント、観光のひとつであるという地域もあり、「伝統の守り方」もさまざまです。
長年守られ、受け継がれてきた鵜飼漁ですが、さまざまな問題を抱えています。「続けていくこと」は簡単なことではありません。船頭不足や鵜匠の高齢化、安全面、金銭面など課題は多く、受け継ぐ人々には「何を大切にしていくのか」を考えていくことが求められます。もともともとは漁であり、生活である鵜飼ですが、昔のコピーだけでは続かない、守るものと攻めるもの、どちらも必要だというお二人のお話が印象的でした。
お二人のお話の最後に、ORGANの蒲さんから一人の高校生が紹介されました。彼は学校の部活動の一環として今年の夏長良川鵜飼で外国人観光客に鵜飼の説明をするボランティアをしていました。その中で鵜飼の歴史や魅力を知った彼らは国内外の有名人に長良川鵜飼の魅力を知ってもらうべく手紙を書いたそうです。その中の一つに、イギリスのウイリアム王子にあてた手紙があったのですが、先日、彼のもとへウイリアム王子からの返事が届いたのです。返事には、彼からの手紙に心を動かされ、あなたのまちに興味を持ちましたと書かれていました。伝統を守る活動の一端を担う彼らの行動が身を結んだことに感心するとともに、彼らの思いが受け止められたことをうれしく思いました。
「伝統の守り方」はさまざまで、鵜匠のように鵜飼を世襲で続け、技術を守っていく人もいれば、森松さんのように鵜飼の魅力を伝える活動をしていく人もいます。そして、ウイリアム王子に手紙を書いた彼のように、自分が感じた「伝統」の魅力を自分なりの方法で伝えていく人もいます。長良川鵜飼の伝統は、多くの人の手によって守られ、続いていくのだと実感しました。
ご参加いただいた皆様、ありがとうございました!次回は信長公入城450年を記念し、-信長の守護神・白山権現を求めて-をお送りします。