第3期 おとなの夜学がはじまりました!

  • 2017年9月20日

私たちの暮らす岐阜のまちがこれまで育んできた文化や歴史を図書館から発信しよう、というこの「おとなの夜学」。岐阜ならではの異色な人々が集まり、「岐阜にいながら知らなかった岐阜のこと」を語ります。 2015年に第1期が始まってから変わらずたくさんの方が注目する、人気イベントで、今回で第3期目になります。今年も前期後期合わせて計8回開催の予定です。IMG_7864_s.JPG

8月28日(月)に開催された記念すべき第1回目のテーマは、「岐阜市民の胃袋を覗く食の大冒険-トキメキ!純喫茶団からガッテン!食堂団まで-」。岐阜はモーニングをはじめとした喫茶店文化や商店街が育てた食堂文化など独自の食文化をはぐくんできました。「こんなテーマを待っていました!」という方も多いのではないでしょうか? ゲストは岐阜市で141年続く老舗油屋「山本佐太郎商店」の山本慎一郎さんと、十六銀行の田代達生さん。夕暮れ時のいい雰囲気の中、金華山テラスで今年度のおとなの夜学がスタートしました。

週6日外食されるという山本さんから最初に紹介されたのは、外食支出額の統計データ。岐阜県の外食支出額は全国7位。中でも海のない岐阜が「お寿司」の支出額全国3位という結果に会場からもどよめきが起こっていました。そして何より、喫茶の分野では堂々の全国1位!やはりモーニングをはじめ喫茶文化がしっかり根付いていることが、数字でも改めて示されています。
  山本さんは岐阜市ならではの個性的かつ魅力的な喫茶店を紹介することを目的に活動を続ける『トキメキ純喫茶団』の一員。純喫茶の調査訪問活動を続けておられます。この日も「古き良き喫茶店」の数々をご紹介くださいました。お店の方の人情や、お客さん同士のコミュニケーション、今では建築するのが難しいのではないかと思われる形をしたお店など、手軽なチェーン店にはない風情が随所に感じられます。
 しかし、この5年ほどで喫茶店の数はぐっと減ってしまったそう。そのお店をこよなく愛し、うれしいことがあった日も悲しいことがあった日も変わらずそこに同じ味が待っているとお店に通ってきた方、そこで友と語り合う時間を楽しみにしてきた方にとって、お店の閉店はどういった意味を持つのでしょうか。そこでの友人との語らいがなくなること。でかける理由がなくなってしまうということ。いい日も悪い日も自分を迎えてくれる『いつもの場所』がなくなること。つまり喫茶店の閉店は「コミュニティの喪失」にもつながるのだという山本さんの言葉が心に残りました。
  田代さんは、十六銀行にお勤めです。銀行員がなぜ、このテーマのゲスト?と感じられた方もいらっしゃったかもしれません。営業のお仕事をされる傍ら、地元グルメ探究を続ける『ガッテン!食堂団』の一員。山本さん同様、岐阜のグルメに精通する方の1人です。お店の人とのふれあい、そしてなにより提供されるごはんのおいしいこと。ローカル食堂はそれらが詰まった、地域と文化の結晶だと熱く語られます。

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その地域への愛着や誇りを持つには、どうしたらいいのでしょうか。歴史を知ることも、その土地の名所旧跡、観光地を訪ねることもその土地を知り、好きになる手がかりになりますが、まずは好きな料理が食べられるお気に入りのお店を1つ見つけることだと、田代さんと山本さんはおっしゃいます。   常連客のリクエストからはじまり、今では柳ヶ瀬でなじみのある味となったメニューもあります。中華そばの上にエビの天ぷらという一見ミスマッチな組み合わせの「天ぷら中華」。大正末期から昭和初期にかけて柳ヶ瀬に登場した天ぷら中華は、現在まで多くの人に愛されています。「B級グルメ」のようにまったく新たなものをその土地の「グルメ」として発信していくことが一般的ですが、岐阜には昔から愛されてきた味が今もしっかりとこの地に根付いています。既存の中にこそ食文化がある!という田代さんの力強い言葉が印象的でした。また、天ぷら中華を出すお店をマップ化してみたところ、川沿いにお店が点在していることがわかりました。いつも川の流れとともにあった岐阜市民の食と暮らしが垣間見えたように思いました。

対談の後半には、会場にスペシャルゲストも登場!「冷やしたぬき」の名店、更科の代表取締役で3代目、水野さんです。更科の「冷やしたぬき」はまさに岐阜市民が昔から慣れ親しみ、食べてきた『常食』ではないでしょうか。昭和3年に日ノ出町で創業、現在までご家族でお店を切り盛りされて来ました。今では更科の代名詞ともなった「冷やしたぬき」ですが、水野さんの子どものころはまだ中華そばなどが中心の、定食屋に近い店だったとのこと。昭和40年ごろから冷やしたぬきが出始め、いつしか看板メニューへと育っていきました。また、冷やしたぬきに欠かせない独特の甘いお揚げの仕込みは、家族で担当しており、実は日によって仕込む人が違うそうです。なじみの味の裏話に、会場は大盛り上がりでした。時が流れても変わらないその土地の素敵な『何か』。おとなの夜学は確かに存在する『それ』をゲストのおはなしの中に見出し、そしてそれらを残していく役割を図書館は担っていきたいのです。

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身近な食をきっかけに地元へのつながり、歴史へのいとなみへと繰り広げられた今回のトークはまさに、「岐阜にいるのに知らなかった岐阜を知る」2時間でした。おとなの夜学では、このあとも、さまざまな岐阜の姿をユーモアと知性を交えてお届けします。次回は9月19日。テーマは「7時だよ!神仏習合!-信長公とカミホトケ-」です。お楽しみに!