こんにちは
ぼくのわたしのショートショート発表会(通称ぼくわた)担当者です。
中高生のショートショート作品を集め、プロの作家と交流をしていただくこのイベントも、みなさまにささえられ3年目となりました。 すなわち作品の選考打合せのため、東京は神田神保町の集英社さんで岐阜の生んだ直木賞作家朝井リョウさんとお会いするのも3回目。私が一年でなによりも楽しみにしている日です。
早く着きすぎると田舎者だと思われるので、歩幅を調整したり古本屋街に積まれた「平凡パンチ」に手を伸ばしたりしながら時間ぴったりに集英社にたどり着きました。 いつもながらシュッとしたイケメンの朝井リョウさん。第1回目からお世話になっている仲間由紀恵似の担当編集者さん、そして今年度はあの「小説すばる」の編集者さんも交えた4人で打合せが始まりました。東京人3名に対して、わたし一人だけ岐阜生まれ岐阜育ち岐阜市役所勤務。打合せをしていると標準語のような岐阜弁のような変な日本語が口をついて出てきます。なにこれかっこわるい。
堂々と岐阜弁を喋らない自分に自己嫌悪しながらも携えてきたおみやげ「岐阜銘菓起き上がり最中」を差し出しました。パッケージには金華山に岐阜城、そして織田信長公が描かれています。信長公が、かつて難攻不落と謳われた岐阜城を何度も攻め続け、ついに攻略したことにちなんだお菓子です。そして岐阜城と言えば朝井さんと同じ垂井町出身の竹中半兵衛。信長の美濃攻めに立ちはだかり、また岐阜城(当時は稲葉山城)をわずか十数人の手勢だけで攻略したという逸話もある垂井の生んだ名軍師です。そんな話を垂井の生んだ名作家である朝井さんにおはなしし、「起き上がり最中」を通して岐阜市と垂井町の、つまりはメディコスと朝井さんの浅からぬ関係を滔々とアピールしてまいりました。
岐阜アピールも済んだところで作品の選考にかかります。今年もたくさんの中高生の作品が届き、そのすべてに朝井さんは目を通してくださいました。AI(人工知能)がテーマの作品や核戦争の危機が扱われている作品など、これまでになく世相が反映された作品もありました。ショートショートらしく星新一のような起承転結のしっかりした綺麗なオチのある作品や、中原中也のような詩的な作品もあります。ショートショートの募集なのにオムニバスになっていて、連作短編に一つのタイトルがついたショートショートという実験的な作品もありました。どんな作者たちが書いてくれたのか本当に気になります。どの作品も作者の工夫が感じられ、それだけに今回の選考ではかつてないほどに朝井さんは時間をかけて悩んでおられました。天を仰いだり頭を抱えたりしながら悩みぬいた結果、選ばれた作品はこちら。
〇中学生の部
・「アイのシナリオ」
・「確率メガネ」
・「いつか帰るその日を信じて...」
・「人面獣心」
〇高校生の部
・「優秀なサンタ」
・「塩味のプリンで世界は逆転するか」
・「一番好きなもの」
・「里帰り」
いずれも個性あふれる作品群です。タイトルだけで想像力が掻き立てられる作品もありますよね。さてどんな作品なのでしょうか。気になる方は10月28日(土)イベントに是非お申込みください。 残念ながら今回選ばれなかった方も、美濃攻めに奮闘した信長公のように何度でも起き上がり応募していただけるととてもうれしいです。
全くの余談ですが帰り道の電車内、私の隣に座っていたスーツのオジサマがウトウトしていたのですが、私とは反対側の隣の乗客が降車してしばらく後、ドアが閉まる寸前に突然すごい勢いで走って出て行ったのです。「ケータイ忘れてますよー!」と叫びながら。自分が降りる予定の駅ではなかったでしょうに電車はオジサマをおいて発車してしまいました。信じられないくらい親切な人がいるものです。
中高生たちの素晴らしい作品に触れ、朝井さんや編集者さんたちととても楽しく打合せさせていただき、最後にこのオジサマの行動を目の当たりにして、なにやらとてもいい気分で帰路に着くことができました。