2月26日(月)、第7回のおとなの夜学が開催されました。
今回のゲストは、歴史博物館学芸員の土山公仁さんと、岐阜育ちの落語家、桂鷹治さん。
今年で15回目を迎える『全日本学生落語選手権策伝大賞』。現在の岐阜市三輪に生まれた安楽庵策伝がさまざまな落とし噺を集めた「醒睡笑」を著し、「落語の祖」といわれるようになったことを顕彰して始まった学生落語家の登竜門ともいえる大会です。
今回は策伝がテーマ。会場にも高座が登場しました!
まずは土山さんから、「落語の祖」とされている安楽庵策伝についてお話していただきました。策伝は美濃国浄音寺で出家した僧。小難しくなりがちな「お説教」にふとした笑い話を含め、人々にわかりやすく、親しみやすいお話を集めた「醒睡笑」という書物を著しました。これが、のちに落語のネタ本になったことで「落語の祖」と呼ばれています。
醒睡笑は「眠気を覚ます笑い」という意味ですが、現代人にとっては簡単に笑えるものではないと土山さんはおっしゃいます。というのも、この醒睡笑で扱われるのは当時のいわば「へえ、そうなんだ!!」というちょっとした雑学的な事柄や豆知識などのネタを集めたトリビア集のようなもので、様々な方面に対する高い教養がなければ「なぜおかしいのか」理解ができないものがたくさん含まれている『笑い』。広く一般を対象にした笑いというよりは、ある程度教養のある人を相手にする笑いで、現代の落語とは大きく異なるものだったようです。
土山さんから策伝の説いた醒睡笑や策伝の出自などに関する新たな見解なども聞き、その歴史が分かったところでいよいよ現役の落語家・桂鷹治さんによる落語の実演。2席落語を演じてくださいました。「学生さんが図書館で勉強しているのを見ながら落語をするのは初めて」とおっしゃっていましたが、閉館前に流れる『蛍の光』の"逆境"も笑いに変えつつ「子ほめ」と「平林」の2席を演じてくださいました。
この日、桂鷹治さんが演じてくださった「平林」という演目は、その原話が醒睡笑にあり、醒睡笑の中ではわりとその面白さがわかりやすい話の1つであるとされています。丁稚が平林(ひらばやし)さんのところへお使いを頼まれ手紙を預かって出かけたものの誰のところへ行けばいいのか行先が分からなくなり、道行く人に手紙の宛名を見せて読み方を尋ねるけれどもみんないうことが違ってますますわからなくなってしまい・・・というお話。識字率が高い現代においてはだれでも理解できる面白いお話ですが、「平林」が「ひらばやし」とも「ひらりん」とも「たいらばやし」とも読めるのだとわかっていることが前提となるため、当時の識字率からすると、「誰でも理解できる」おもしろさだったとは必ずしも言えないのかも知れません。
会場は普段のおとなの夜学よりもいっそう和やかな雰囲気で、参加者のみなさんも「楽しかったわー!ありがとう!」と笑顔で帰って行かれる様子が印象的でした。会場全体が大きな笑いに包まれる、楽しい学びの時間となりました。