3月16日(金)、中央図書館南東読書スペースにて、「ほん×まちトーク~まちの中に本棚を~」を開催しました。ゲストは山本佐太郎商店の山本 慎一郎さん、喫茶星時の樋口 尚敬さん、ビッカフェの堀江 俊宏さん、喫茶ヨジハン文庫の津田 芳子さんの4名。みなさん本のある空間で人と街をつなげる取り組みをされています。カンチョ―が聞き手をつとめました。
いま、本と近い距離で生活されているゲストのみなさんにとって、子どもの頃、「本」はどんな存在だったのでしょうか。まずはそれぞれのルーツを探るべく、「私と本」について語っていただきました。実家が書店だった津田さんは、本が近すぎて逆に遠い存在だったそうです。本というと楽しむためのものではなくて「家の手伝い」。忙しいときには本から離れたいという思いすら持っていました。星時の樋口さんも、小学生のころは活字に縁がなく、本を手にとっても、挿絵ばかり見ていたそうです。小学生の時はエルマーの冒険の挿絵に胸を躍らせました。年齢が上がるにつれてライトノベルを読むようになり、徐々に絵から文字を追うようになりました。柳ケ瀬倉庫で古本の販売とともにカフェも営む堀江さんは優しく物静かないでたちとは裏腹に、大学生までずっとサッカーをされていたそうです。山本さんが幼いころ夢中になったのはゲームブック。当時テレビゲームでRPGがはやっていて、謎解きをするような気持ちでワクワクしながらゲームブックを読んでいたと話してくださいました。
意外にもそれほど本とは縁のある生活でなかった皆さんの子ども時代。では、どのようにして、今の形にたどり着いたのでしょうか。 今のお店を始めたときの思いや、それぞれのこだわりについてうかがいました。
実家の書店をカフェに改装し、姉妹でお店をされている津田さん。店名の由来になったのは『よじはんよじはん』という、お使いの途中で寄り道する女の子の絵本。リビングルームのような空間でゆったりできる居心地のいい空間では、思わず寝てしまう人もしばしば。お店のレジではお店のキャラクター「よじにゃん」が迎えてくれます。
リトルプレスをきっかけにカフェめぐりを始め、ついにお店も出してしまったという樋口さん。特徴的なのは、店内に所狭しと置かれたフリーペーパーや秘蔵のリトルプレスコレクション。古本の出張販売やイベントも行われていて、小さなお店には、毎日多様な人が集い、何かを生み出しています。もはや喫茶店の枠にとどまらない「情報を発信するひとつのメディア」ともいえるのではないでしょうか。
常々「よくわからないこと」をやりたいと思っているという堀江さん。お店のコンセプトは『偶然と違和感』だそうです。映画監督を目指した学生時代から、図書館司書や古本販売などさまざまな経験を経て現在の柳ケ瀬倉庫のお店に落ち着きました。「もやもやして帰ってほしい」というその不思議な世界観は、いろいろな経験をしてこられた堀江さんの人生そのもののように感じました。
岐阜で長年油屋を営む山本さん。文化の発信拠点でありたいと語ってくださった山本さんの言葉はいつも、岐阜への愛で満ち溢れています。全国から岐阜へ食べに来たくなるおかしも大事だけれど、自分は日持ちするお菓子を岐阜から全国に発信していきたいと、7年前から福祉施設で手作業で作られたかりんとうなどの販売も始めました。まちライブラリーの発起人でもあり、メディアコスモスが開館する際に図書館を図書館で終わらせない、図書館に来た人がまちにも足を運ぶ仕組みを作れないかと思いを巡らせた当時のお話も聞かせてくださいました。
それぞれの方法で、本を通じてまちとひととをつなごうとするみなさん。図書館を拠点に、そうやってゆるやかにつながった人の道が、体中を巡る毛細血管のように岐阜のまち全体に広がっていけたら。そのために図書館は何ができるのか、考えていきたいと思いました。