トークイベント 「ぼくらの時代。ぼくらの知の広場をつくろう」が開催されました

  • 2019年11月20日

 秋の読書週間にあたる11月9日(土)、トークイベント「ぼくらの時代。ぼくらの知の広場をつくろう」が開催されました。

 岐阜市立図書館では、来年3月までに「シビックプライドライブラリー(集いの広場)」の開設にむけて準備を進めています。目指しているのは、岐阜に住むひとびとが、自分たちの暮らしを、自分たちでつくるための支えとなる情報を集めて、本とひとをつなぎながら語り合うことのできる、新たな知の広場。

 今回のイベントはその一環としての企画であり、2部構成の1時間半にわたって、熱いトークが繰り広げられました。

 第1部は『都市と地方をかきまぜる!食べる通信の挑戦』をテーマに、日本食べる通信リーグ代表理事の高橋博之さんにご講演いただきました。東日本大震災を契機に、高橋さんは5年前から、魚や野菜が付録でついてくる月刊情報誌「東北食べる通信」を発刊されています。地方の生産者のもとへ何度も出かけて対話をし、その食材ができるまでのプロセスに焦点をあてて紹介している新しい媒体です(現在では、全国各地で40誌以上の食べる通信が発刊されています)。

 今の日本では、生産者と食べ手である私たちが「分断」されており、食べ物がつくられる現場が見えづらくなっています。人は食べないと生きていけません。全国民が当事者であるはずの食べることが、他人事になってしまっているという現状。『人は、かかわりがあることにしか行動を起こさない』、と何度も言及されていた高橋さん。この「分断」と「かかわり」という言葉は、後半のトークでも度々登場していきます。

 第2部は高橋さんと、ブック・コーディネーターの内沼晋太郎さん、美濃市在住で文筆家の服部みれいさん、NPO法人ORGAN理事長の蒲勇介さんに、当図書館の館長を加えたクロストークです。5人の共通点のひとつが、ある時点で都会から地方へ暮らしの拠点を移した(つつある)ということ。お互いの移住の経緯から、「自然」と「子ども」についてのトークへ。田舎の子が、おもちゃ屋の砂を欲しがったりゲームをしたりするように、自然と触れあう機会は田舎の子のほうが多いとは限りません。子どもは都会から排除されなかった最後の自然そのものであり、その子どもすら排除されつつあるという言葉が印象的でした。

 トークの後半は、シビックプイドライブラリーに入れるならぜひこの1冊を!というイチオシの本について、パネリストの方々に語っていただきました。そして、近年少なくなっている里山、原っぱについての話から、終盤では再び「かかわり」がkeywordに。

 「検索」するだけで、求めている答えにすぐたどり着いてしまう時代に生きている私たち。しかし、検索できるのは自分と「かかわり」のあるものだけ...。ただ、何が自分とかかわっているのかが具体的にわからないという声も。

 そんなときに頼りになる場のひとつとして挙げられたのが、本屋や図書館。本が並んでいる場所には、偶発的な、予期しない出会いがたくさん待っています。「何だかわからないけど出あいがしらに出あってしまった」本やコトバとの出会いは、ときに自分の行動を大きく変えるきっかけになります。ただ今準備中のシビックプライドライブラリーも、岐阜に住むみなさんにとってそんな場になれば嬉しいです。どうぞご期待ください!


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※パネリストのみなさんが選んだ1冊はこちら!

高橋博之さん:『生物の世界ほか』(今西錦司/著)

服部みれいさん:『長くつ下のピッピ』(アストリッド・リンドグレーン/著)

内沼晋太郎さん:『オーバーストーリー』(リチャード・パワーズ/著)

蒲勇介さん:「農民芸術概論綱要」(宮沢賢治/著)

吉成信夫(図書館長):『ホールアースカタログ』