図書館ブログ「今日も本を読もう」

  • 2020年6月 2日

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No.34

『コンビニたそがれ堂』
村山 早紀/著  ポプラ社

 本当に大切ななにか、なくしてしまったなにかを探している、そんなお客さんのために、 たそがれどきになると開店する不思議なコンビニ「たそがれ堂」。  

 私がはじめてこの物語に出会ったのは、中学生のころ。最近、久しぶりに読み返してみましたが、今でも変わらず愛おしさや、やさしさ、懐かしさがあふれてきました。 初めて読んだときから時がたち、現在と中学生のころとは感じ方も違うけれど、あの頃よりも少し「さよなら」を重ねたぶん、物語が、言葉が、より心にしみました。

  「見えなくなっても、会えなくなっても、きっと、『どこか』には、みんな、 ちゃんといるってことさ。
    消えてしまうわけじゃない。誰の魂も。どんな想いもね」

 もの、ひと、夢......。ちゃんとお別れできずに、こころのどこかに引っかかっている「さよなら」はありませんか?
 それらを優しく包んで、今よりもちょっとだけ明日へ、未来へとすすむ力に変えてくれるおはなしです。

心に引っかかったままの「さよなら」に......。

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『霧のむこうのふしぎな町』
柏葉 幸子/著  講談社

 子どものころ、大切に大切に何度も読んだ3冊が愛蔵版になっているのを本屋で発見し、思わず懐かしくなって手に取った。水色の窓が開いたカバーを外すと表紙いっぱいにあのころ何度も心を飛ばした不思議な町の光景が広がっていて、思わず本を抱きしめてしまった。
 なかでも一番のお気に入りは1作目の「霧のむこうのふしぎな町」。
 リナが夏休み、飛んで行った傘に導かれてたどりついたのは、霧の谷にあるピコットばあさんの下宿。ピコットばあさんに、「働かざる者、食うべからずだ」、といわれ、通りにある様々な店の手伝いをすることになって-、という物語。
 小鬼や魔法使いやマンモス、不思議な生き物や変わった人ばかりでてくるファンタジーなのだけど、おとなになっても大好きなシーンは、「はたらくっていっても、わたし、なにもできないんです」といったリナにピコットばあさんが、「だれがなにもできないって言ったんだい」というところ。
 気ちがい通りで働くなかで、だんだん堂々と自分の意見を言うようになったり、自分で考え、行動していくようになるリナの姿に自分を重ねていたような気がする。
 「この町が本当に必要な人はこの町に来ることができるのよ。どんなところにいても、一歩踏み出すと気ちがい通りに来れるってことよ。」というのは、本屋のナータさん。
 わたしもいつか行けるだろうか。私はどのお店で働こうかな。1ページ目の霧の谷の地図を眺めながら部屋の中でお気に入りの傘を広げて、この傘が霧の谷へ連れて行ってくれないだろうかと風をまっていたあの日を思い出す。

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No.32

『クマとうさんのピクニック』
デビ・グリオリ/さく  評論社

 いつもより、家族でゆっくりと過ごしたG・W。
小さいころ、読んで、読んでと父にせがんでいた本を、ふと思い出しました。

 『クマとうさんのピクニック』 デビ・グリオリ/さく  どこまでも広がる青い青い空。クマとうさんは、
子供たちを連れて、ピクニックにでかけます。クマとうさんの、奮闘もみどころ。ほのぼのとした気持ちになる一冊です。

 小さいころ、家族みんなで食べる食事の時間が待ち遠しくて、私が「きょうの、ごはんなあに」と聞くと、いつも父は、本にでてくる言葉の、「めだま、ぎょろぎょろ...魚!」と冗談めかして答えます。めだまぎょろぎょろという言葉がつくだけで、魚がみんなそうなんだ と少しこわくなり、毎日こわいこわいと思って食べるのは嫌だなと、残念に思った私。今でも時々「今日のご飯は何か」と聞くと、「めだま、ぎょろぎょろ...。」と答えかけてにやっとします。そんな父に、読み聞かせをしてもらった時間はかけがえのない宝物です。
(読書推進係 K)

思い出は "めだまぎょろぎょろ" の魚とともに


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No.31

『こころ』
夏目 漱石/著  岩波書店

 みなさん、こんにちは!
 アニメ・マンガ・ゲームが大好きな司書の緑メガネです!休みの日はゲーム実況をみながら、任天堂の某無人島で化石を掘りつつ、スマホのゲームの周回をしています。
 なにを書こうかな~と悩みましたが、家でも読めるものがいいなと思い、青空文庫で読むことができる物語を紹介しようと思います。

 ということで、今回紹介するのはこちら、夏目漱石の『こころ』です!
 中学や高校の頃に、国語の教科書で読んだことがある方もいらっしゃるんじゃないでしょうか? かくいう私は中学で出会いました。そして、習ったのは「私とK」の物語だったかと思います。
 『こころ』は、私が先生に出会ってからの交流、先生がどんな人か「私」の視点から語られる「先生と私」の話と、先生がどんな風に生きてきたか、懺悔に近い告白がつづられる手紙の「私と?」の話で構成されています(厳密にいうと途中に「私と家族」の話も絡んできますが割愛で)。そう、教科書に載っていたところは物語の終盤だったのです。あとから、まるっと読んだときに、とても驚いた記憶があります。だって、ミステリー小説でいうところの「犯人の動機」にあたる部分ですよ? 読んでええの? ってなりませんか......もちろん、ミステリーじゃないのは承知ですけど。
 「教科書を読んだから、もうこの作品を知っている」で止まっている方は、もう一度読んでみると、実はもっと話が続いていたり、学生の時には嫌いだった相手の心情がわかったりと新たな発見があるかもしれません。

 青空文庫は、著作権が切れた作品を有志で載せているホームページです。『こころ』が気になるなって方や、なかなか昔の作品を読まないなっていう方も、この機会にぜひ読んでみてください!

 以上、緑メガネがお届けしました!




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No.30

『おっきょちゃんとかっぱ』
長谷川 摂子/文 降矢 なな/絵  福音館書店

 私たちが見ている世界はほんの一部で、すぐそばにはまだ見たことのない 世界が広がっているのかもしれない、そんな風に思える出来事に出会ったり、想像してみたりしたことがある人もいるのではないでしょうか。青く青く澄んだ空、やさしくあたたかな夕焼け、さわさわ揺れる木々、田んぼを吹き抜ける風...。
不思議で美しい世界はとなりあわせ。小さいころ、大好きだった本を紹介します。

『おっきょちゃんとかっぱ』長谷川 摂子 文   降矢 なな/絵
おっきょちゃんは小さな女の子。家の裏にある川で遊んでいると河童のガータロに出会います。
誘われるままに水の底のお祭りに出かけると・・・。

 水の底のお祭りがとてもあたたかくきれいで、楽しそうに描かれていて、私も水の底の世界に行きたい!!と食い入るように何度も何度も同じ頁をみていました。大人になった今でも鮮明に覚えています。
涼やかでわくわくして少しだけ切ないお話。いつもの帰り道、何気ない風景、特別ではないけれど、それは見知らぬ世界への入り口につながっているのかもしれません。 (読書推進係  K)

水の底のお祭りに行きたい。


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No.29

『10の奇妙な話』
ミック・ジャクソン/著  東京創元社

 この自粛生活で、我が家の「積読(つんどく)」(いつか読むつもりで購入し置かれたままの本)がありがたいものとなった。
 積読を脱した1冊、ミック・ジャクソン『10の奇妙な話』。短編集だ。デイヴィッド・ロバーツの装画が物語の雰囲気を際立たせている。

 1話目の「ピアース姉妹」は海の遭難者を助ける優しい姉妹の物語だが、結末は狂気の沙汰である。どれも奇妙な物語だが、世の中で起こっていることに結び付いていると思った。人間の優しさや残酷さ、賢さや愚かさを考えさせられた。
 面白くて2度読み、ミック・ジャクソンの他の作品も読んでみたくなった。

積読の出番!

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No.28

『イライラしない、怒らない ADHDの人のためのアンガーマネジメント』
高山 恵子/監修  東京書籍
『もうイライラしない! 怒らない脳』
茂木 健一郎/著  徳間書店

 普段の生活ができない日々が続く。今の過敏な状況下で「できない」が増えてくると、いつもは気にも留めないことも気になるのか、ニュースやネットからは世界中から様々な「怒り」が画面からあふれ出てきているように感じる。
 「怒り」は行動の源だ。でも怒りの「性質」を見誤るととんでもない痛手を負い、自分も周囲も深い傷跡を残してしまうことになる。それは避けたい。
 「アンガーマネジメント」は、怒りへの対応が絵入りでわかりやすい。「怒らない脳」は理論的な解説が腑に落ちる。
 「怒り」に操られず、生きるパワーに変換していきたい。

「怒り」と上手に付きあっていきたい。


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No.27

『いやいやえん』
中川李枝子/さく  福音館書店

 息子が保育園児だったころ、枕もとで読み聞かせていた本が『いやいやえん』だった。
いろんな絵本や本があるのに息子は毎晩『いやいやえん』をせがんだ。    
 私は、息子が主人公のしげるに似ていると思っていた。
保育園に行くのを嫌がったり、先生に叱られたり、友だちとけんかをしたり、とにかくじっとしていないところがそっくり。そんな場面になると息子がクスッと笑ったような表情を見せ可愛かった。息子も自分と重ねて聞いていたんじゃないかと思う。

 『いやいやえん』の読み聞かせは小学2年生まで毎晩続いた。
私はそれまで「今日は別の本にしよう」などと言わず『いやいやえん』を読んだ。

 暗記するくらい読ませてもらえ、幸せだった。

『いやいやえん』で幸せな夜。



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No.26

『壁の世界史 万里の長城からトランプの壁まで』
イアン・ヴォルナー/著 山田文/訳    中央公論社

 1989年、東西ドイツを隔てていたベルリンの壁が崩壊した。2016年、アメリカ大統領選でトランプ候補はメキシコとの国境に大きな壁を作ることを公約に掲げて当選を果たし、壁を作っている。人類の長い歴史の中でいくつもの壁が作られ、壊されてきた。
 「壁」は「境界線」「縄張り」「防御」とも言い換えることができる。
「壁」は目に見えるものも、見えないものもある。侵入を防ぐため、身を守るため、壁は作られる。
 マスクや手洗いは、ウイルスを防ぐ壁となり身を守る。でも、差別の壁は孤立と誤解と偏見を生むだけだ。そんな壁、いらない。

あなたは壁をつくっていませんか?

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No.25


『カペー朝』
『ヴァロワ朝』
『ブルボン朝』
佐藤賢一/著    講談社(講談社現代新書)

 おそらくたいていの人が知っているフランスの王様といえば、「太陽王ルイ14世」、それともフランス革命で処刑された「ルイ16世」でしょうか?少し興味があっても、「ルイ〇世」「アンリ〇世」「シャルル〇世」同じような名前+数字ばかりでなかなか覚えにくいです。

 それどころか、十字軍や百年戦争の頃には公爵や伯爵など諸侯までアンリやシャルルだったりするので、出てきたシャルルがどのシャルルさんなのか頭が混乱します。

 題名だけ見るとしち難しそうな歴史本のようですが、著者は研究者ではなくフランスの歴史小説を多く書いている作家なので、多くのルイさんアンリさん達の人物像が物語の登場人物として頭に入ってきます。とはいえやはり、全ての王様が何世だったのかあやふやなままだったりしますが。

フランスの歴代の王様が分かればフランスもっと面白くなるかも

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No.24


『トラックドライバーにも言わせて』
橋本愛喜/著    新潮社(新潮新書)

 世界中のどこからでもお取り寄せでき、気軽に注文ボタンをポン!と押してしまう現代。需要と供給の距離がこれほど短くなったのは、もちろんインターネットの影響が大きい。生産者との距離が近くなったのはいいけれど、「届けてくれる人」の存在をつい忘れがちだ。
 実際に大型トラックに乗り運送の仕事をしてきた著者の実体験と取材から得られたトラックドライバーたちの実情を知ると、生産地と購入者の点と点を結んでくれる彼らの存在の大きさを思い知る。今度玄関に出た時には「ありがとう」をしっかり伝えたい。

届けてくれた人に、「ありがとう」を。

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No.23


休館中の恐怖体験

 その日私は遅番勤務で通常開館を迎えた日のための展示企画を考えていました。
参考にしたい資料は、ほぼ貸出中で、児童書架に数冊残っていました。時刻は19時30分。
 2階は真っ暗だろうけど、今までだって消灯になった2階で必要な資料を探したことは何度もあります。
 2階には懐中電灯もあることだしそれを点けて探せばいいやと上がって行きました。

...でも、いつもと何だか違うのです。暗闇がいつもよりずっとずっと深いのです。開館している時は、ブラインドを開けていますが今は閉め切っているからでしょうか...。そのブラインドが何故だかあっちでもカタッ、こっちでもカタッと鳴るのです。どこからか風でも入って来ているのでしょうか...。 静けさもいつもと全然違う...。

 夜8時に利用者の方が帰られて電気が消えた図書館は、たしかに不気味な静けさになるけれど、利用者の方のあたたかみとかざわめきの余韻がどこかに残っていてなんとか耐えられる静けさです。でも利用者の方が昼も夜も消えてしまった今の図書館の夜の静けさは、のしかかるような大きなかたまりになって迫ってくるようです。
 そのうえ誰もいないのに書架のどこからかパタン、パタンと本が倒れるような音が聞こえてくるのです。懐中電灯の弱い灯りまでもが怖くなってきて『早く資料よ見つかってくれ~!』と心の中で叫びながらやっと見つかった資料をひっつかみ、走って階段の所まで行きました。ドアをあけた時の明かりのなんとありがたかったことか...。

 息を切らして1階の作業エリアに降りてから、同僚に、2階がいかに怖かったかを話していると、上からかすかに音楽が聞こえてきます。かたまる私に同僚は「いつも閉館時間に流れている蛍の光だよ。」と教えてくれました。私が2階にいた時に流れなくて本当に良かった!あの暗闇と静けさの中で、蛍の光なんぞが流れようものなら、私は間違いなく気絶していたことでしょう。

 図書館は、利用者の方に来ていただいてこそ命を宿すことができるのだと実感しました。だから今の図書館の夜の闇があんなに深く、怖ろしい静けさを宿したのでしょう。一日も早く新型コロナウイルスの感染に歯止めがかかり、またたくさんの利用者の方が来館してくださる生き生きとした図書館になることを心から祈っております。


                                    (読書推進 T)

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No.22


『嫁入り道具の花ふきん』
『嫁入り道具の花ふきん教室』
近藤陽絽子/著    暮しの手帖社

 たまたま著者がテレビで花ふきんについて語っておられるのを見て興味を持ち手に取った本です。
 作品集のような「嫁入り道具の花ふきん」が好評で作り方をもっと知りたいという声にこたえて「嫁入り道具の花ふきん教室」が出版されたそうです。1枚のさらし布を裁ってふきんに仕立てる方法、下絵の描き方、ステッチの進め方まで写真付きで丁寧に文字通り教室のように説明されており、花ふきん入門にぴったりです。

 私は他の著者が書かれた本も参考にしたり、時には手芸店で売っている下絵付きのさらし布を購入して様々な模様に挑戦しています。何枚も仕立てて著者のように将来娘が独立する時に持たせてやれればと勝手な夢を見ています。

花ふきんを知っていますか?

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No.21


『旅の絵本1』
安野光雅/著    福音館書店

 「旅の絵本」を寝るのも惜しんで見入っていたことがある。
馬に乗った旅人がどのページにも描かれた字のない絵本を。

 子どもの頃は、その旅人を探すことが楽しかった(「ウォーリーをさがせ!」は当時まだなかった)が、大人になって見直したときにとんでもなくすごい絵本であると気付いた。 自分に備わったそれまでの知識が試されるのである。少々おおげさな言い方に聞こえるが、小さいころからどれだけ本と親しんできたか、世界を見たり聞いたり、いろいろな経験をしてきたかがこの絵本を見るとわかるのである。はたまた勘の働き具合さえも。

 細い線で細かく描かれ風を感じるような風景、賑やかな声が聞こえてきそうな人物や動物。開いたページをくまなく見ると「あれ?この絵はあの童話のあのシーンだ」などと懐かしく思う発見がある。また、緻密に描かれた建造物の絵を眺めては、「きっと何か有名な建物に違いない」などとわからないことを悔しく思うのである。そんなふうに字のない薄い絵本に何時間も引き込まれ、次に見るときはもっと発見したいと希望を持ったりするのである。

 残念に思ったことがある。近年重版された本には安野さんの解説が載っていることだ。 自らの経験から発見できた達成感を味わうためには、解説をつい読んでしまわぬよう気を付けなくてはいけない。

※シリーズが全部で9冊あるので、自分を試すには長く時間がかかります。

安野光雅さんの「旅の絵本」で試される私

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No.20


『お菓子の包み紙』
甲斐みのり/著    グラフィック社

 手土産をいただいたとき、外側の包装紙を見ただけで「〇〇のクッキーだ!」「△△のケーキだ!」と中身に心が躍る。読書好きの母は、気に入った包装紙でブックカバーを作っていた。私は手作りノートのカバーに再利用している。
 名店の馴染みの包装紙から、有名作家のオシャレデザインまで、包装紙もこれだけデザインが素敵だと立派なコレクターアイテムになるようだ。
 本を開けたとき、中身のお菓子よりもとりどりに装った多芸な包装紙デザインに驚く。ただただ眺めるだけで時間を忘れてしまう。お願い、包装紙は破らずにきれいに剥がして!

ビリビリしないで。

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No.19


『夏への扉』
ロバート・A・ハインライン/著  早川書房

 ハインラインが「夏への扉」を発表したのは65年前のことです。
 昔の作品であるのに、作品の世界にどんどん引き込まれていきます。
この本に描かれる西暦2000年の姿は、私が経験した2000年とは全く違う世界です。
 彼は未来の世界をこんな世界だと思い描いていたのだなと思いつつ、私たちが思い描くネコ型ロボットが生まれる22世紀も実は・・・と未来が楽しみになります。 (図書館員S)


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No.18


『宇宙のみなしご』
森 絵都/著    KADOKAWA

-陽子とリンの姉弟は両親が仕事で忙しく、留守がち。だからいつも2人で新しい遊びを生み出し、強く生きてきた。二人のいまのとっておきの遊びは真夜中の屋根のぼり。-
「屋根のぼり!?」突拍子もない二人の遊びに引き込まれ、一気に読み進めたことを覚えている。

 うずうず、もやもや、わくわく、ドキドキ。いろいろな気持ちを抱えて、じたばたぐるぐるしていた小学5年生の時だった。

"一番しんどい時はだれでも一人。誰にも何とかしてもらえないことが多すぎることを私は知っていた"
"大人も子どもも誰だって一番しんどい時は一人で切り抜けるしかないんだ"
"頭と体の使い方次第で、この世界はどんなに明るいものにもさみしいものにもなる"

 本の中からたくさんの言葉が当時のわたしの心にぐいぐい迫ってきた。
 幸いかつての私にも今のわたしにも家族や友達や学校の先生や同僚や、たくさんの味方がいて、一人でどうにもならない日はそうそうないのだけれど、うまくいかない日を何かやだれかのせいにしてしまいたくなったらいつもこの本を開く。陽子とリンが、ちっともくじけずおもしろいことを次々見つけていく姿は、『まだまだおもしろいことができるに違いない』『次はどんなふうにこのピンチを楽しんでやろうか』と私の心に火をつける。
 大切な遊びである屋根のぼりを辞めなくてはいけない日の最後の陽子のコトバ『さあ、次は何をして遊ぼうかな』の気持ちを私もいつも忘れたくないな、と思っている。

次は何をして遊ぼうかな?

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No.17


『100語でたのしむオペラ』
フィリップ・ジョルダン/著   白水社(文庫クセジュ)

 パリ国立オペラ座の音楽監督だったジョルダン氏が教えてくれるオペラのABC及び裏側。曲目から歌手、音楽用語、オペラの現在・過去など、多くのハテナを分かりやすく解説してくれています。

 初めから順に読んでも面白いし、わからない言葉を選んで読んだり、たまたま開いたところを読んでみたり。少々お高く感じられがちなオペラがとても親しみやすく感じられるようになります。

 著者は今年からウィーン国立歌劇場の音楽監督に就任、2021年には来日公演も予定されています。

新国立劇場の公式ホームページでは「巣ごもりシアター」と題して、過去上演したオペラ公演映像を期間限定で見ることができます。(5/13現在)

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No.16


『さいはての彼女』
原田マハ/著   KADOKAWA

 爽やかな風が吹いているような1冊。
連作になっている短編の主人公はみんな、恋に破れたり、仕事に失敗したりして、何かにぶち当たっている人々。
逃げ出して、旅に出て、出会ったのは・・・。

 バイクには乗ったことがないけれど、この本を開くといつも、この本の凪ちゃんとタンデムしているような爽快な気分を味わえる。
 凪ちゃんのお父さんが凪ちゃんにかけた『線なんてどんどん超えていけ』という言葉は私にもたくさんの光をくれた。何かにつまづいたとき、『壁を超える』なんて今のわたしにはそんな勇気も体力も気力もないよと思ってしまうけど、『線』なら一歩踏み出すだけ。そこにあるのは高い壁なんかじゃなく、自分で引いてしまった線だ、といつも思うことにしている。線なんて、軽やかに、スキップで超えてやろうじゃないか。そう思うとぐっと気が楽になって、息がしやすくなるような気がするのだ。

 最近家にいることが増えて、息が詰まってしまいそうな日がある。
こんな時は、久しぶりに凪ちゃんとタンデムしようかな。

線なんて、どんどん越えていけ。

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No.15


わたしの読書体験1ページ

『蝉しぐれ』
藤沢周平/著  文藝春秋

「これはおもしろいから読んでみよ。」そう言って祖父が中学生の私に手渡したのは藤沢周平の『蝉しぐれ』だった。
 表紙はタイトルと作者名の墨書のみ。おまけに古ぼけているときた。「こんなピチピチの女子中学生になんて地味な本を渡してくるのだ」と思ったが、読み始めてみるとこれがとびきりおもしろい。主人公の牧文四郎の淡い恋心、熱い友情、そして何より快活な剣さばき。寝る間も惜しんで布団の中で読みふけった。
 そして、『麦屋町昼下がり』『よろずや平四郎活人剣』『春秋の檻』『雪明り』。藤沢周平から始まってさらにたくさんの小説を読むようになった。

 そんな私の読書人生のきっかけを作ってくれた祖父も2年前、93歳の大往生で亡くなった。
 棺にはあの世で退屈しないよう、手作りの1億円札と藤沢周平の本をそっと入れておいた。


(児童図書係H)

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No.14


『くらべる値段』
おかべたかし/著  山出高士/写真    東京書籍

 我が家の正月は、おせち料理をパクつきながら『芸能人格付けチェック』を見るのが恒例だ。画面に映る2つの品を見て価格の高い方を当てるゲームに、あーだこーだと自分の観察力と推理力を芸能人と競い合うのだ。

 この「くらべる値段」はタイトルの通り、同じ品物でも値段が違う2つが並んでいるので紙上『格付けチェック』が楽しめる。でもそれだけでは物足りない。なぜ値段が違うのか、理由をちゃんと教えてくれる。

 例えば、かまぼこ。同じ会社のかまぼこでも、1つ300円と3600円と価格に大差がある。この違いは何か?
 一番大きな違いは「機械で成形」と「職人の手で成形」。機械だと半円形だが、職人の手成形では扇形になるそう。形の違いはプリプリした弾力となり食感に表れ味わいに影響するそうだ。値段の理由を知ると、高いのもうなずける。ちなみに職人が持っている「水産練り製品製造技能士」という資格は国家資格だそうだ。
意外な雑学を仕入れるのにもうってつけの1冊。

くらべて、ならべて、わかること。

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No.13


『きょうのおはなしなあに』
ひかりのくに

 夜。まだ起きていたいのに、早く寝なさいという両親。しぶしぶ2段ベッドにもぐり込む。
姉とおしゃべりした後、眠たくないけど目をぎゅっとつぶっていると、母が毎晩読んでくれた本があった。
「きょうのおはなしなあに」。1日1話。童話、昔話、神話、知らない外国のおとぎ話、季節や行事にまつわるお話。笑っちゃうお話、寂しくなっちゃうお話、へぇーっと感心するお話。
 たまに父が読んでくれることもあった。母と比べるとたどたどしさもあったけど、とても楽しかった。
読書推進係N子の本にまつわる思い出。

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No.12


『BROOCH』
内田也哉子/著  渡邉良重/絵    リトル・モア

 絵やデザインの勉強をしていた学生時代に、友達から誕生日プレゼントでもらった、今でも宝物の本です。きっと、好きな本だろう...と私の趣味や好きなものを想像して選んでくれたことが今でもとてもうれしく思います。
 この本は、ページが薄く透ける紙でできていて、前のページの絵と次のページの絵が透けて繋がっていて、物語と連動しながら進む美しい絵に見惚れてしまいます。

この本がきっかけで、関連するポストカードや雑貨を集めました。

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No.11


私のお気に入り in 中央図書館

 みなさまご存じのとおり、岐阜市立中央図書館はとても広い。
 本を探すのも、本を書架に戻すのも、とにかく大変。
 みなさまには「館内はゆっくり歩いてください」とお願いしながら、私たち図書館員は小走りで駆け回っている。
 そんな慌ただしい毎日だけれども、思わず足を止めてしまう場所がある。それがココだ。
 広い広い図書館のなかで、小さな小さなヒーローが頑張っている。

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No.10


『ねえだっこして』
竹下文子/文  田中清代/絵    金の星社

 はちわれの小さな猫は思っています。

 わたし このごろ つまらない
 おかあさんの おひざに
 あかちゃんが いるから

 赤ちゃんに大好きなお母さんの膝を占領されて、うらやましくて寂しくてしかたがないのです。でも、猫はおかあさんの膝を貸してあげることにします。

 わたし もう おおきいから
 くさの なかでも ねむれる

 お母さんに抱っこされる赤ちゃんから目が離せないながらも、懸命に我慢する猫の表情やしぐさが切なくて、短く表現される気持ちが心に沁みて、涙がにじみ出てきます。
 登場人物に一切名前はありません。猫はあなたの身近な誰かかもしれないし、あなた自身かもしれません。

ぎゅ~っと抱きしめてあげたい

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No.9


『人と組織が変わる 暗闇ごはん』
青江覚峰/著   徳間書店

 「ダイアローグ・イン・ザ・ダーク」というイベントに参加した。
 まったく何も見えない真っ暗闇の中、足を1歩前に踏み出すのに迷いと恐れが交錯する。手を前に出しても、何も当たらない空のむなしさで身体の実感が消える。誰かの助けを借りないと、進むことも座ることも触ることもできない。人は独りで生きていけないことを思い知る。でも誰かの助けを借りる、誰かを助ける手を差し伸べることにためらいも抵抗もなくなる。
 ところが、見えるようになると状況が一変する。見えない時には気軽に話しかけて助け合っていたのに、見えた途端に遠慮と偏見が交錯する。「見える」ことが却って行動を邪魔することを知った。

 この本では暗闇の中で食事をする。「美味しいものは目でも味わう」とも言われ、メニュー写真は湯気や肉汁といった"しずる感"が求められ、インスタグラムは"映える"食事で溢れている。
 著者は言う「暗闇で食事をすると、感覚が研ぎ澄まされ、さまざまな感情がこみ上げてくる」と。人間は視覚87%、聴覚7%、触覚3%、嗅覚2%、味覚1%と圧倒的に目からの情報に頼っている。視覚が遮断されると「何を食べているのか」を知るためにほかの五感がフル回転する。すると、いつもは気づかなかったことに気づく。この「気づき」が大事。食材の存在を意識し、素材そのものに意識を向けることで「食べる」ありがたさを再認識する。

 真っ暗闇はちょっと厳しいけど、たまにはテレビやスマホを消して、目の前のご飯にじっくり向き合って食べてみませんか? 食事を作ってくれた人、素材を作ってくれた人、素材を届けてくれた人の思いが見えてきます。

見えないからこそ、みえること。

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No.8


『忍者学講義』
山田 雄司/編  三重大学国際忍者研究センター/著     中央公論新社

 子どもの頃、大好きなテレビ番組は時代劇。特に千葉真一さん率いるJAC(ジャパン・アクション・クラブ)総出の『影の軍団』は何度も観ても飽きないほど熱愛している。影の軍団の主人公は忍者。普段は一般人に紛れて暮らしているけれども、隠密活動の時には超人的な身体能力と007並みの武器で危機を脱する。ああ、痺れる。

 そんな忍者好きの私が思わず手に取ってしまったのが、この本。三重大学が上野商工会議所と伊賀市とタッグを組み、大学の力を存分に活用して「忍者」を現代科学の手法で研究している。忍びの代表流派の一つ・伊賀の里を有する三重県ならではの郷土愛がビシビシ伝わってくる。

 大学教授が書いた本だから、真面目で硬く読みづらいかと思いきや、読売新聞の伊賀版・三重版で連載されていた「三重大発!忍び学でござる」を再編したものなので、素人で忍者に疎い人もわかりやすい。
 目次も「忍者食を作ってみる」(食品学)、「忍者の動作を科学する」(運動生理学)、「芭蕉忍者説を疑う」(日本近世学)など気になる見出しから読み始められる気楽さは、寝床読書におすすめ。各項目を担当する先生たちの顔写真がすべて忍者頭巾を被っているお茶目さがナイス!

お休み前に、忍者はいかが?

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No.7


『中野ジェームズ修一×運動嫌い わかっちゃいるけど、できません、続きません。
中野ジェームズ修一/著     NHK出版

 コロナウイルス感染症拡大防止のために家に居る生活が続いている。外に出ない生活が続くと運動不足が気になる。世間でも同じ悩みを持つ人が多いのか、室内でできるヨガや体操の動画がたくさん出てきている。

 でも私、運動は苦手。子どもの頃から体育の授業は後ろから数えるほうが早く、毎年の学内マラソン大会は仮病を使ってでも休みたいくらいだった(当日休んでも後日補講があるので、結局走ることに)。
 運動は苦手だけど、動かないと太るばかりだし......。ああ、やっぱり運動しないといけないのかなぁ。と暗い気持ちになっていた時に目についた鮮やかな黄色い表紙。タイトルの「運動嫌い」に目が釘付けに。

 この本はフィジカルトレーナーとしてストレッチなどの本を多く出している中野ジェームズ修一さんが「運動が苦手」「嫌い」「続かない」といった運動に対してネガティブな人たちと対談し、彼らの気持ちを聞きつつ彼らに寄り添ったアドバイスをしている。
 これまでの「運動したほうがいいよ」本では、「たった〇回でいい」「これをするだけで」といった効用を前面に押し出したものが多かったけれど、この本では編集者、フリーランス、地方の営業職、看護師といった業種ごとに対談をしているので、自分のリアルに近い運動お悩み相談が読める。運動にちょっとだけ前向きになるきっかけをつかみやすいかもしれない。

 健康を維持するためには、筋肉痛になるくらいの運動をして筋肉をつけないと意味がない。とハッキリ言われてしまったのは結構ショック。うーん、長生きしたいならば筋肉痛と友達にならないといけないらしい。まずは本文で紹介されているスクワットをやってみようかな。

運動したほうがいいのはわかっちゃいるけど。ねぇ...。

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No.6


『すごい神棚 見えない力を味方にして成功する方法
窪寺 伸浩/著    宝島社

『スゴ母列伝 いい母は天国に行ける ワルい母はどこへでも行ける
堀越 英美/著    大和書房

『すごい言い訳! 二股疑惑をかけられた龍之介、税を誤魔化そうとした漱石
中川 越/著    新潮社

 ここ数年「すごい会議」「すごい工場」「すごい自己紹介」と、「すごい」本がやたら目につく。「会議」「工場」「自己紹介」と単語では素通りすることも「すごい」が冠につくと後光がさして輝いて見えるからスゴイ。
 私が気になった「すごい」本3冊を選んでみた。

 「すごい神棚」は、神棚を祀ることで神様の力を借りて運を開いていくことを説く。でも、神棚を置くことがゴールではなく、神棚を通して「感謝」を習慣化することがゴールだ。日々生きていけることは、当たり前のことではなく、誰かのおかげである。そのありがたさを忘れてはいけない。
 「スゴ母列伝」には育児書のお手本のような母親ではなく、自分を貫いて独自の育児を実践したトンデモお母さんが登場する。彼女たちの育児からは「正しい母」ではなく、「子どもと自分に合う子育て」が大事なのだなぁ、と思う。
「すごい言い訳!」には、言葉の達人たる文豪たちのあらゆる場面での言い訳が収録されている。やらかしちゃったときに、先人たちはどう切り返したのか。先輩、お知恵を拝借!

すごい本、3連発!

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No.5


『火垂るの墓』
野坂 昭如/著     ポプラ社

 6月ころに、家の近くの板屋川でホタルが飛び交います。その灯(ともしび)を見ると思い出すのが、この作品の冒頭シーン...。

 第二次世界大戦の終戦近く、駅構内で主人公・清太は衰弱死します。所持品はさびたドロップ缶だけ。駅員がそれを草むらへ投げ捨てると、缶から妹・節子の遺骨がこぼれ散り、その周りをホタルがひとしきり飛び交う...。

 空襲で母を亡くした兄妹が、養ってくれる大人に恵まれず栄養失調で亡くなるまでの物語です。
 戦争によって、人々は命だけでなく、人と助けあう心をも奪われてしまいます。それが戦争の恐ろしさなのでしょう。

アニメもいいけど、息をつかせぬ文章から作者の肉声を感じとってください。

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No.4

『鹿の王 上』
『鹿の王 下』

上橋 菜穂子/著     KADOKAWA

 異世界で起こった謎の病をめぐる長編ファンタジーです。
 黒い獣の襲撃からたった一人生き残ったヴァン。
 黒狼熱という致死率の高い感染症の治療に専心する医術師ホッサル。
 多くの国と国が対立し、陰謀が渦巻く中、ヴァンとホッサル、二人の男たちが愛する人々を守るため、この地に生きる人々を救うために戦います。

人々は謎の病に打ち勝ることはできるのか。

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No.3


『谷川俊太郎詩選集 1』
谷川 俊太郎/著    集英社

 生きる
 それはミニスカート
 それはプラネタリウム
 それはヨハン・シュトラウス

 この詩を声に出して読んでみてください。生きることのきらきら、どきどきした感覚に包まれて、ちょっぴりせつなくてうれしくなります。

ヨハン・シュトラウスが誰か知らなくても関係ない。

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No.2

『十五少年漂流記』
ジュール・ヴェルヌ/著    椎名 誠、渡辺 葉/訳    新潮社

 時は1860年。物語は15人の少年たちを乗せた船が、嵐で遭難している場面から始まります。たどり着いた無人島。そこで子どもたちだけのサバイバル生活が始まります。 島を探検し、食べ物を獲り、住みかを作ります。時に対立しながらも絆を深め、自分たちの力でたくましく生きぬいていく成長の姿を描いています。

より原本に忠実な本は『二年間の休暇』というタイトルで出版されています。

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No.1

『二番目の悪者』
林 木林/著   庄野 ナホコ/絵  小さい書房

 1ページ目はこの言葉から始まります。 「これが全て作り話だと言い切れるだろうか」 お金持ちで立派な金のたてがみを持ったライオンは、 「次の王様は自分だ」と思っていました。ところが、貧しくても強くて優しい銀のライオンが 「次の王様候補だ」と噂に聞きます。 どうしても王様になりたい金のライオンは嘘の噂を流し始めます。

ハッピーエンドではないこの物語が指す、二番目の悪者とは?

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