11月8日(日)、「桐島、部活やめるってよ」や「スター」の作者として著名な岐阜県出身の直木賞作家、朝井リョウさんをお招きして『目指せ直木賞作家!ぼくのわたしのショートショート発表会』をみんなの森ぎふメディアコスモスみんなのホールにて開催しました。6回目となる今年は過去最多の137作品が集まりました。たくさんの応募作品から事前に朝井リョウさん自ら選ばれた8作品を、作者の中高生自身の朗読で発表し、朝井さんから1人ずつコメントをいただきました。今年の発表者は半数が公募サイトなどからこのイベントを知った岐阜県外からの参加者で、このイベントが全国で知られる大会に育ちつつあることを実感しました。
生徒たちの朗読が始まると、会場の雰囲気がパッと変わります。朗読を聴きながら思わず息をのんでしまったり、意外な展開に「えっ」と声を上げそうになったり。今年は例年にも増してそれぞれの物語の世界にぐいぐい引き込まれるドラマチックな朗読が多かったように感じました。 朝井さんは発表者の朗読が終わると作品1つ1つに丁寧に、ユーモアを交えてコメントし、時には作品を「これは解説なし突き放し系の作品だね」など独自の分類で表現していきます。発表前は舞台袖で「ふう・・・」と硬い表情で深呼吸していた中高生たちも、舞台上での大仕事を終えた後は「古き良き日本の風景のような作品だなあ」とか、「セリフ1行のネタばらしがあざやか!」などの朝井さんの言葉に、嬉しそうにはにかんだり、緊張のほどけた柔らかな笑顔で作品に対する思いを語ったりしてくれました。
今回はコロナ禍での開催ということで、オンラインミーティングアプリのZoomを使っての観覧のみでしたが、発表者の中高生にオンラインで全国からたくさんの方がエールを送ってくださいました。アプリのQ&A機能を使って会場と観覧者との間で双方向のやりとりができたので、朗読が終わると「朗読でより魅力的になる作品ですね!」「学生時代を思い出すさわやかな作品!」とリアルタイムで観覧者からの感想コメントが入り、それを受けてさらに朝井さんがコメントを返すなどオンラインならではのおもしろさがあったのではないでしょうか。また、観覧者の半数は岐阜県外からご覧いただいたということで、多くの人にこのイベントを知っていただけたことをうれしく思いました。
イベントの最後には「文章を書くことで得られるパワーというものがあると思う。コロナをはじめとする社会の状況に気分がふさぐこともあるけれど、書くことは必ず自分を支えてくれる」と、朝井さん。発表者だけでなく作品を送ってくれた中高生すべてへの心強いエールになったと思います。「書くことをこれからも一緒に続けていけたらいいな」、と未来の書き手に同じ土俵で向き合ってくださる言葉に温かい気持ちになりました。吉成信夫・ぎふメディアコスモス総合プロデューサーも「言葉は君たちがこれから生きていくための武器になる」という第1回のショートショート発表会での朝井さんの言葉を改めて紹介し、作品を体で表現する醍醐味を感じてほしいと語りました。
イベント後の朝井さんと発表者の中高生との交流会では、ざっくばらんに言葉が交わされます。中高生のとき読んで印象に残っている作品は?という質問に答える朝井さん。昔、作家の村山由佳さんにいわれた「校長先生の話のように『聞いてほしい話』というのはつまらないもの。こんなこと人に知られちゃいけない、言っちゃいけないという話こそ書かなくちゃ」という言葉を紹介してくださり、未来の書き手たちも興味深そうに聞きいり、うなずいていました。 サイン本を手渡してもらう際にうれしさのあまり涙を流す生徒の姿もありました。朝井さんに会いたくて初めて小説を書いたという子から、過去作品を読み、傾向と対策を練って何作品も書いた子まで、それぞれのバックグラウンドはさまざま。それぞれが想いをもってこの日に臨んでいたのだなあと感慨深かったです。
例年と違うことがたくさんあった今年のイベントでしたが、和やかな雰囲気の中終えることができました。
発表者の皆さん、また、全国から彼らの勇姿を見守ってくださった観覧者の皆様、ありがとうございました!