11月3日(日・祝)に第10回ぼくのわたしのショートショート発表会を行いました。中高生たちが自作のショートショート作品を朗読し、小説家の朝井リョウさんにコメントしていただこうというこの企画。今年は記念すべき10回目ということで、朝井さんと同じく岐阜県が誇る小説家の中村航さんもお招きし、おふたりと選ばれた8名の中高生たちがステージでトークを繰り広げました。
当日は232点の応募作から朝井さんと中村さんが「この作品を書いた人に会ってみたい!」と選んだ8人がメディアコスモスに集まりました。今年は朝井リョウさん自ら司会を務め開始5分前の影ナレーションから期待感が高まります。おふたりは同じ高校の先輩後輩で、朝井さんにとって人生で初めて会った小説家が中村航さんだったそうです。普段から親交のあるお2人ですが、イベント共演は初めてとのこと、今日の日を楽しみにされていました。
そして中高生の作品朗読が始まると、文章で読むのとはまた全然違った色を見せる物語に想像力がかきたてられます。緊張の面持ちでステージにあがった子どもたちは朗読が終わり緊張感から解放されると晴れ晴れとした笑顔が見られました。1作品目の朗読が終わってすぐ、中村航さんが「毎回このレベルなんですか?この大会は...!」と作品のクオリティの高さに驚きの声をポツリ。それに対して朝井さんが「そうなんですよ、このレベルなんです」と胸を張ってくださって、朝井さんと一緒にこの発表会を10回見届けてきた図書館としても、とても嬉しく誇らしく感じました。
どの作品にも、中村航さんは書き手としてのアドバイスやコメントだけでなくいち読者としての驚きや感激、作品に対する考察や疑問なども都度、素直に口に出してくださったのが印象的。朝井さんは司会として場を進めながらもひとりひとりの作者へ寄り添い暖かいことばをかけて励ましてくださっていて、おふたりと話しているうちにどの子もどんどん表情が明るくなっていきました。
イベント最後の質問コーナーで、なんと第4回のショートショート発表会で選ばれステージに立ち、そして別の作品のコンテストで中村さんに選ばれた経験もある方から質問をいただきました。現在は中学校で先生をされていて、今の中学生におふたりのたくさんの作品たちの中でどれを勧めたらいいか、の問いに中村航さんは『100回泣くこと』朝井リョウさんは『正欲』をあげ、「先生から勧められると「これがいいから読め!」と無理やりな感じが出るから学級文庫にそっと"置いとく"くらいがちょうどいいね」、とおっしゃったのが心に残っています。このステージで自分の思いを作品にこめた経験のある、かつて中高生だった人が今、中学生に言葉を伝える仕事をされていて、朝井さんから受け取ったバトンを次の世代の子どもたちに渡す役割を担っている、こんなドラマチックなことがあるのだな、10年続けるということはこういうことなのだなと胸が熱くなりました。
発表会が終わった後は朝井さん、中村さんと発表した8人との交流会。お茶とお菓子を楽しみながらのゆるい雰囲気の中にも、ここで何かを得て帰ろうとする前のめりの姿勢で質問する子どもたちの姿が見られ、熱量のこもった充実した時間となりました。
ご来場いただき、子どもたちにエールを送ってくださったみなさま、ありがとうございました!