10月29日(土)、作家の朝井リョウさんを招いて、ぼくのわたしのショートショート発表会を開催しました。
朝井リョウさんは岐阜県出身の作家さんで、「桐島、部活やめるってよ」や、「何者」など、ドラマ化、映画化された作品を多数お持ちの話題の方でいらっしゃいます。このイベントは昨年に引き続き第2回目の開催で、今年は中学生から35作品、高校生から33作品、合計68作品のご応募をいただきました。朝井リョウさんは事前にそのすべてに目を通してくださり、29日の発表会に出場してもらう8作品がその中から選ばれました。当日は8作品の作者である中学生高校生が、自身の作品を舞台で朗読し、ひとりひとりに朝井リョウさんから講評をいただきます。
「自分が書いた小説を、作家やたくさんの人が見ている舞台で、自ら朗読する」という、特別な状況の中、中高生のみなさんはさぞ緊張しているのではないかと思っていましたが、みなさん堂々と、のびのびと舞台上で朗読し、朝井さんと会話される姿が頼もしかったです。事前に文章を何度も読んでいても、朗読を聞くとまた違った感情が沸き起こり、中高生の紡ぎだすみずみずしい言葉一つ一つに、はらはらしたり、ドキドキしたり、わくわくしたり-。あっという間の1時間半でした。
ショートショートという特性上、作品には5枚という制限が設けられており、その制限の中で物語を展開し、完結させるのは至難の業です。それでも選ばれた8作品はどれも書き出しの一言目からぐっと心をつかまれ、読者を楽しませようというしかけが、短いお話の中にたくさんあるものばかり。朝井さんからも「こういう風に書こう、と頭で考えてもできない描写がすっとできている」、「文章のセンスやタイミングが絶妙!」、「書き出し大賞!キャラクターの愛らしさが魅力的」と驚きのコメントが何度もありました。
また、朝井さんによると今年の特徴として、文章から「こういう子が書いたのかな」という想像ができない作品がとても多かったそうです。中学生高校生が書く話、というと、どうしても学校生活の話であったり、自分と同じような年代の人の出てくる物語になりがちだけれど、今回の応募作品には会社で働く人の目線で書かれたもの、SF、動物の目線のものなど、文章やストーリーから作者を想像できるものがなく、当日実際に会って初めて、「こんな子がこれを書いたのか!」と驚いたとおっしゃっていました。
朝井さんは、どの発表者の作品も丁寧に読み込んでくださった上で、ひとりひとりに、「このアイディアはどうやって思いついたの?」「小説はこれまでにもよく書いていたの?」と尋ねたり「これからも書き続けてくださいね!」と力強く声をかけてくださいました。
「言葉や文章は人と人とをつなぐもので、会えない人とも、見えないもの、できないことともつながれる一番の武器になります。みなさんぜひ外の世界へアプローチする術として、磨いて使ってを繰り返し、大事にしてあげてください。」という朝井さんの言葉が心に残っています。このイベントが、今回応募してくれた、未来を担う中高生が自分の持つ「武器」を磨くための一助となれたのであれば、図書館としてもこんなにうれしいことはありません。
このイベントに限らず、これからも、中高生の皆さんが一歩踏み出すための「武器」を磨こうとしたとき、使おうとするとき、その手掛かりとなるようなものをたくさん提供できる図書館でありたいと思います。