平成29年2月20日(月)、みんなの図書館おとなの夜学が開催されました。
今回のテーマは「信長と美濃薬膳‐伊吹山麓と岐阜をつなぐ薬草文化‐」です。今年は織田信長公が岐阜に入城して450年の記念の年ということで、先月に続き信長にゆかりのあるテーマです。
さて、おとなの夜学は、私たちの暮らす岐阜のまちがこれまで育んできた文化や歴史を図書館から発信しよう、という企画です。今回も「岐阜にいながら知らなかった岐阜のこと」、興味深い岐阜のお話をゲストの方から伺います。
今回のゲストは岐阜生物多様性研究会代表で、薬学博士の田中俊弘さんと、NPO法人山菜の里いび理事長の小寺春樹さん。
まず最初に、岐阜生物多様性研究会代表で、美濃薬膳の立役者ともいえる田中さんから、なぜ岐阜で薬草なのか?というそもそものところをお話いただきました。
かつてポルトガルの宣教師、イルマンの進言により、信長が伊吹山に薬草園を作ることを許可しました。宣教師はヨーロッパから約3000種の薬草を移植したといわれています。そのため、ヨーロッパに原生する薬草が伊吹山で発見されることが現在でもあるそうですが、『南蛮寺興廃記』など一部の資料に数行の記述がある以外は記録が残っておらず、『伝説の薬草園』と言われています。
入城450年の記念の年にこの薬草園をPRしていこうと、岐阜薬科大が長良川温泉の料理人の人や行政と協力して薬膳料理の提供に向けた試食会や薬草を使った名産の開発などさまざまな取り組みがされています。
田中さんは春日村に住んでいた小寺甚五郎という人がかつて伊吹山の薬草、甘茶を取って垂井へ行商した話など、なぜ岐阜で薬草なのか、という歴史も踏まえ現在取り組まれていることを教えてくださいました。
田中さんが行政などと一緒になってさまざまな事業を展開されている一方、もう一人のゲストである小寺さんは春日村で薬草を取り入れた暮らしを実践されています。NPO法人山菜の里いびの代表を務め、村として薬草の文化を継承していこうと日々取り組まれています。
小寺さんはたくさんの写真を見せながら、春日村について、NPOの取り組みについて、そして平成26年10月から始まった信長の薬草園再生プロジェクトについて話してくださいました。小寺さんが代表を務めておられるNPOはなんと加入の条件が65歳以上であること!だそうです。
昔から、雪に閉ざされ医者へ行けないときには薬草を煎じて飲むなど、春日村に暮らす人のそばにはいつも薬草が身近にありました。今では家ごとにレシピがありお風呂に入れたり里芋と一緒に煮たり、煎じて飲んだりするなど、その楽しみ方はさまざまです。
春日ならではの生活の知恵に価値を見出していきたいとおっしゃっていた小寺さんの言葉が印象的でした。
その小寺さんが代表を務めるNPOでは耕作放棄地を活用して地域野菜や山菜を植え、農地化を進めることで地域の活性化に取り組んでおられます。1年目はタラの木を2000本ほど植えたそうですが、シカにやられてしまい、ほとんどがダメになってしまったそうです。
そこでそれからはヨモギを植えお茶や入浴剤に加工して販売することも始めました。今ではジュースや蓬莱もち、せっけんなど様々な商品を販売しています。
小寺さんが写真を見せながら説明してくださる合間には田中さんが「この草は生えている場所の標高によって名前が違うんですよ」など、たくさんの薬草の豆知識を教えてくださいました。田中さんが本当に楽しそうに語られるので、とても興味深く聞くことができ、山や薬草の世界の奥深さにぐいぐい引き込まれた2時間でした。
たくさんのご参加ありがとうございました!次回、今年度最後のおとなの夜学は3月13日(月)、「あなたは、ほんとうの岐阜祭を知らない―岐阜町人文化の核を探る―」をお送りします。お楽しみに!