知らなかった岐阜を知る「みんなの図書館 おとなの夜学」。第8期2回目を令和4年10月19日シビックプライドライブラリーで開催しました。テーマは「 岐阜復興期の新聞・出版群像 ―メディアでたどる戦後岐阜―」です。
戦後の岐阜を生きた知られざる出版人たちを紹介されるのは岐阜放送の社長である山本さんと、「東海民報」の林さん。敗戦後、人々の日本を変えたいという政治への熱はそのまま出版活動への意欲につながり、多くの新聞・雑誌が生まれました。
山本さんは岐阜復興期の出版状況についてプランゲ文庫(*1)などを参考に調べられていますが、興味を持った入り口はカストリ雑誌(*2)でした。岐阜で有名だったのは戦後の柳ヶ瀬にあった石神書店です。石神書店ではすぐ儲かるからと性を売り物にした単行本や雑誌を発行する一方で、青年向けの健全な新聞も発行していました。
玉石混交の出版物があふれる時代において、岐阜のジャーナリズムは今よりも活発的で大きな流れを築いていました。
当時、乱立していた新聞や発行物の中で今日もなお岐阜で健在なのがローカルメディア「東海民報」です。発行人である林さんは先代編集者だった父親が「立派なことを言っても続かないと意味がない」と経営面もおろそかにせずに新聞を続けていく姿に感銘を受け、跡を継ぎました。岐阜や柳ヶ瀬の様子など、私たちに馴染みのある話題と関連付けながら当時の出版世相を語られました。
個人が自由に情報を発信できる現代の状況に触れながら、ジャーナリズムや地方のメディアが担うべき役割について林さんは問題提起をしており、考えを深めるきっかけの時間となりました。
*1 プランゲ文庫 国立国会図書館が1948年にできるまで、戦後の日本で発行された出版物を集めていた歴史学者ゴードン博士によるコレクション。原本はアメリカにありますが、国立国会図書館のデジタルアーカイブから見ることができます。保管されている岐阜の新聞は147紙、雑誌は85冊に渡ります。
*2 カストリ雑誌 戦後4、5年にわたって流行った大衆娯楽雑誌。扱う内容は性的なもの、グロテスクなもの、怪奇的なものなど多岐にわたり、度々摘発されました。内容が粗悪なことから3号以上続かない雑誌を意味していて、当時流行した3合も飲めば潰れるカストリ焼酎とかけているとされます。