おとなの夜学 第56夜 出張講座「日本にたなびく岐阜の旗」を開催しました
ブログ2025/12/18
𠮷田旗店が繋ぐ150年の技
第11期夜学の2回目は、ぎふメディアコスモスを飛び出し長良川沿いの青柳町にある𠮷田旗店へ行って来ました。相撲や歌舞伎、落語の会場前にはためく大きな幟(のぼり)等を『美濃筒引き本染め』の伝統と手仕事で手掛ける染屋さんです。
はじめに作業場で染め工程を見学しました。長さ約5mの真っ白い相撲幟の下書き線に沿って、社長の𠮷田聖生さんが筒引きを実演。筒引きとは、渋紙の筒にもち米や米ぬかなどを混ぜて作った糊を入れ、筒から糊を押し出して布に線や模様の輪郭を描く技法です。糊が乾いた後に染料で生地を色付けし、糊を洗い流すと、糊の部分が白く浮かび上がります。糊を洗い流す時に水は欠かせないため、豊富な地下水がある長良川近くに作業場があるそうです。
作業場2階の大広間では、𠮷田会長が無地の相撲幟に力士名の下書きの実演です。幟は下から上へ見上げてみるもの。見上げた時が一番いいバランスになるように文字の大きさや形を考えて書いていきます。また人気力士だと複数の依頼主から幟を依頼されるため、同じ名前でも漢字の描き方や色の配色を変える心配りも欠かせません。𠮷田会長は相撲文字、歌舞伎文字、寄席文字等様々な書体を習得しているので、「関」という漢字を7通りに描き分けることができるそうです。
作業場には若い職人さんもいて、筒引きや染色工程を一緒にしていました。𠮷田旗店では全国の同業者から修業したい人を引き受けています。それは染めの歴史や技術を学ぶ専門の学校がないためです。
日本の染屋も今では200軒あまりしかありません。次代をつなぐ職人を育てることは良きライバルを作ることにもつながります。𠮷田会長は「ライバルのいない職業は滅びる」と言います。競争相手がいるから互いに切磋琢磨する。だからいいものができるので生き残れる。滅びる職業になりたくないので、修業に来た人には「どんどん覚えて帰ってください」と言っているそうです。
𠮷田旗店が染屋としてだけでなく、ひとつの文字文化を継承し、同時に興行をにぎわして人の心を盛り上げていくものを作っていく場がこの岐阜市にあることを誇りに思いました。
イベントの様子を記録した動画がおとなの夜学ホームページから見られます。気になる方はぜひ動画をチェックしてみてくださいね。
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