7月17日、子どもと本と遊ぶ日スペシャル「伊東さんといっしょに語ろう。みんなの森、図書館のこと」を開催しました。翌日の7月18日がみんなの森ぎふメディアコスモス(中央図書館)が開館してちょうど1年ということで、メディアコスモスを設計した建築家の伊東豊雄さんをお招きしたスペシャル企画です。
岐阜市立図書館の子ども司書や図書館長の吉成も参加し、メディアコスモスを作った人、使う人、働く人の三者でメディアコスモスの今までとこれからについて語り合いました。
イベントはまず映像でこの1年の振り返ることから始まります。開館したときの様子や今まで行ってきたイベントの様子などが流れ、職員にとっては感慨深い映像でした。
次に、伊東さんにメディアコスモスの設計についてお話していただきます。構想段階のラフスケッチなどの貴重な資料を見せていただきながら、岐阜に来たときに緑が少ないと感じたため緑に囲まれた施設を作りたいと思ったことや、周りの山の形と調和するように曲線の屋根にしたいと思ったことなどをお話していただきました。そこから出来たのが、メディアコスモスの特徴である波打つように木材を組んで造られた屋根です。この広大な屋根を上からドローンで空撮した映像も見せていただき、会場のみなさんも見入っていました。他にもグローブ(中央図書館に吊り下げられている白い傘のようなもの)の役割などを直接教えていただきました。
次に子ども司書がトークに入ります。館長から出される「自分にとって一番居心地がいい場所は?」「メディアコスモスの中で一番好きな場所は?」などのお題の答えをボードに書き、伊東さんや観客に向けて発表しました。自分の部屋の押入れの中が居心地いいと答える子や、メディアコスモスのとある部屋の、壁と柱の間にあるスペースが好きと答える子もいて、伊東さんも子どもたちの答えを楽しそうに聞いていらっしゃいました。
その後、子ども司書から伊東さんへの質問コーナーも行い、「建築などのデザインはどうやって考えているんですか?」や「伊東さんがメディアコスモスで好きな場所はどこですか?」などの質問が飛び出しました。子ども司書のみんながメディアコスモスで好きな場所はテラスや本の蔵が多かったのですが、伊東さんもテラスが好きだそうです。縁側のようなイメージで造ったことや、テラスがある図書館は全国でも珍しいというお話をしていただきました。
最後に館長と伊東さんによるトークです。震災についても話が広がりました。震災後に建てられた仮設住宅を見て、居心地の良さなどを意識しないただの「箱(ハウス)」になっていると感じた伊東さんは、縁側や薪ストーブがあるような、「ホーム」を感じられる集会場を作りたいと考え、東北に通うようになったそうです。そうしてできた集会場は、老若男女にそのコンセプトがわかりやすいよう、シンプルに「みんなの家」と名づけたことをお話しされました。
館長もこのメディアコスモスにも「みんなの森」というフレーズが付いていることに触れ、漠然とした「みんな」ではなく、小さなお子さんからお父さんお母さん、おじいさんおばあさんまで、ここの場所に来るひとりひとりのための場所になりたいと話しました。
最後に館長が一年前の開館時に掲げた「子どもの声は未来の声」を紹介しました。ここは子どもの成長を見守る場所を目指しているので、子どもたちが上げる声もみんなで温かく見守っていきましょうという理念です。来館する子どもたちも10年も経てば岐阜市を背負う大人に成長するため、その時までずっと関わり続けていける場所になりたいと話しました。これを聞いた伊東さんも今日参加した子ども司書に、高校生、大学生になったら次の子どもたちを導いていくような人になってほしいことや、それまでここに通って、ここを生き生きした生きた場所にしてほしいと思いを託されました。
お話のなかで、「建築などのデザインはどうやって考えているんですか?」との子ども司書からの質問に、「本当は建築ではなく場所を造りたい」とお話ししているのが印象的でした。壁などもなく、外にいるような居心地のよさがあって、ただここにいたいなあと思う場所を作りたいそうです。メディアコスモスの建物の持つ開放感や居心地のよさは、伊東さんのこうした考えから生まれたのだなと感じました。
また、建築は生きているものなので、建てた後使う人がどう使ってくれるかが大切という言葉も心に残りました。伊東さんが想いをこめて造ったメディアコスモスを、私たちの手で生きた場所にし続けていかなければと身が引き締まる思いでした。
残念ながら伊東さんはすぐに帰らなければならなかったので、最後は子ども司書も一緒にお見送りしました。最初に打ち合わせをしたときはとても緊張した様子の子どもたちでしたが、最後は打ち解けてなごり惜しそうに伊東さんを乗せて走り出した車に手を振りながら、子どもたちも走って追いかけました。
開館1周年にふさわしい、原点に立ち返ることができたイベントになりました。参加してくださったみなさん、ありがとうございました。