本と映画をめぐる金曜トークショーを開催しました。

  • 2016年11月14日

 11月4日(金)、本と映画をめぐる金曜トークショーを開催しました。
 街の中心にはいつも本があり、映画があり、本や映画を通じてたくさんのひとのつながりが生まれ、そこからまちの文化が発展してきました。このイベントは柳ケ瀬の商店街に昔からある映画館、書店、商店街のひとたちが、まちを長年見守り続けてきて感じていることや、文化の中心を担ってきた者として、これからのまちのために何ができるのかを考え、語り合うトークショーです。20161114132654-8c6009b06ad4d1d364687a9bc7938c79ab66987c.jpg

 ゲストは映画館を代表して、シネックスの磯谷貴彦さん。本屋を代表して、自由書房の大塚圭子さん。そして、柳ケ瀬の商店街を代表して、柳ケ瀬商店街の振興組合連合会理事長の林亨一さん、羽島市の映画資料館の館長である近藤良一さん。柳ケ瀬の商店街に昔からお店を構えた人や、昔からの柳ケ瀬をよく知り、岐阜のまちのよいことも、そうでないことも今日まで変わらず見守り続けてきた人たちです。

 まず最初に、「何度でも見たくなる大切な映画は?」という質問が、参加者とパネリスト全員にされました。それぞれ、思い思いに手元の紙に大切な一本を書いていきます。書き終わったら一斉に紙を上にあげ、発表しました。36名の参加者に4人のパネラーと館長。41名いれば41名それぞれの大切にしたいものや思い出があります。

そこから、パネリストの、思い出の映画トークが繰り広げられました。「泣きたいときに見る映画は?」「初めて見たHな映画は?」「お気に入りの男優、女優は?」など、それぞれの思いたっぷりに語られます。

20161114133024-24570b824bc0a540288463ba49f642c21ea8aca5.jpg昭和33年ごろの柳ケ瀬商店街はとてもにぎわっていて、人とすれ違うのが大変なほどだったそうです。羽島市の映画資料館の館長を務めておられる近藤さんが当時の柳ケ瀬商店街の映画館の歴史について、地図を見ながら解説してくださいました。当時は全部で12の映画館が柳ケ瀬商店街にはありました。今のように椅子席ではなく、たたみの席や立見席が多く、多くの人が映画を楽しんだ後は喫茶店で語り合う。当時の柳ケ瀬商店街ではよくみられる、当たり前の光景でした。

本屋さんも、人が集い、語り合う場所、という意味では同じです。板張りの教室のような書店にはLPレコードを売るコーナーもあり、たくさんの若者が集いました。自由書房の大塚さんの、「ここは文化の発信地。私たちは文化と教養を売っているという思いで仕事をしています」という言葉が心に残りました。今よりずっと本が売れた時代。当時大ヒットした「窓際のトットちゃん」は週に100冊以上が売れることもあったそうです。


子どもの頃父親に連れられて行った喫茶店ではじめてコーヒーを飲んだ思い出。大人の仲間入りをしたような、わくわくする昂揚感。喫茶店というと不良というイメージだった当時、テスト勉強を頑張った自分へのご褒美として、ドキドキしながら入って食べた喫茶店のパフェはなんであんなにおいしかったんだろう-。はじめて女の子を呼び出して、緊張しながらお店でひとり待っていたこと。パネリストの皆さんから語られる青春の一ページがとてもリアルで、話を聞いているうちに、当時のドキドキやワクワクをまるで追体験しているような、不思議な感覚に襲われました。

 
これから柳ケ瀬は、どうなっていくのでしょうか。「地方都市の昔からある小さな映画館はどこも風前のともしびで、文化でお腹は膨れないし、そんな中で文化を担えと言われるのは荷が重い」とシネックスの磯谷さんの言葉は切実です。一方、林さんは、「みんな、当時は語る場所がほしかった」とおっしゃいます。家でDVDを見たり、インターネットを通じてみるなど今は選択肢がたくさんあります。映画も、本も、一人でどこででも楽しむことができます。でも、そうではなくて、映画を見て、本を読んで生まれた、自分の中の深いところにある「何か」について誰かと語りたい、分かち合いたいという思いを、誰しも持っているのではないでしょうか。


映画館や書店だけでなく、それはきっとこの図書館も同じです。今回のイベントのアンケートでも、図書館に今後期待するイベントとして、「本や映画について、もう少し少人数で語り合う場を作ってほしい」「趣味を同じくする人ともっと何かを語ってみたい。」など、のご意見をたくさんいただきました。図書館でも本を借りるだけではなく、そこで誰かと出会いたい、語りたい、集いたい。文化に触れるため、足で出向き、その場を感じること、そこで感じたものを通じて誰かとつながることの尊さは、今も昔も変わらないのではと感じました。20161114133104-8ecf1b1224b9d88e82a6dd79a94021d335f31c87.jpg
 
人は誰でも多少いびつなところがあって、それがその人の人間性であり、おもしろさなのだと思います。画一化することで安心を生み出す場所が多い中で、柳ケ瀬にはそれぞれの持ついびつさを楽しむだけの寛容さがあり、だからこそきっと商店街を歩いていると、自分のでこぼこのおさまりどころを見つけられるようなここちよい安心感があるのではないでしょうか。とても楽しく、懐かしく、また、柳ケ瀬ならではの「付加価値」を模索する、前向きな話ができたように思います。今回は時間の関係で参加者の皆さんと語り合うことができなかったので、この講座の続編をこれから企画してみたいと思います。お楽しみに!