1月22日(水)と1月29日(水)に、長良川大学講座「読み聞かせ教室」を開催しました。ご家庭での読み聞かせについて学びたい保護者の方とお子さんのペアでご参加いただく本講座。講師としてお招きしたのは、東海学院大学短期大学部教授・杉山喜美恵先生です。
第一回は、講義形式で先生のお話を伺い、ご家庭での読み聞かせについて学びました。まずは先生から参加者の皆さまへの自己紹介。「はじめまして」という大型絵本を読み聞かせてくださり、和やかな雰囲気でスタートしました。続いて、参加者の方の自己紹介。「自分でアレンジをして読んでも良いのか」「年齢に合っていない本を読んでいても良いのか」、「おすすめの絵本が知りたい」等々、悩んでいることをたくさん発言されました。先生は、「ご家庭での読み聞かせは、自由に、楽しむことを大切にしてください」ということを強調され、その上で、読み聞かせではぐくまれるもの、発達や月齢ごとにおすすめの絵本をたくさんご紹介されました。最後は、「だっこのおにぎり」という絵本を読み聞かせ。お子さんをおにぎりに見立てて、親子でふれあいながら絵本を楽しんでおられました。

第二回は、読み聞かせの実践を行いました。第一回講座時にご記入頂いたお子さんの「絵本カルテ」(お子さんの好きな食べ物や最近読んだ絵本を書いていただいたもの)を元に、先生と司書で選んだ図書館の本を5冊ほどお渡しし、その場でお子さんに読んで頂きました。その間、先生や司書は会場内を回り、アドバイスをしたり読み聞かせをしたりしました。また、お渡しした絵本の他にも、先生ご持参の絵本や図書館のおすすめ絵本がずらりと並び、参加者の皆さまがいろいろな絵本と出会う機会となりました。何度も「これがいい!」と同じ絵本を読んでもらったり、講座後に図書館の本を借りていったり...。お気に入りや気になる絵本を見つけていただけたようで、嬉しく感じました。

講座後のアンケートでは、「子どもが本をなめるので少し本から遠ざかっていたが、一冊読み切らなくていい、途中で本を集中できなくてもいいと言ってもらえてハードルが下がったので、またたくさん読もうと思いました!」、「つい忘れてしまう『本を読むのは楽しいこと』を再認識できてよかった」、「気に入る本が見つかってよかった」等のご感想を頂きました。一司書としても、参加者の皆さまとのやりとりや先生のお話を通して学ぶことは多くあり、とても勉強になりました。
参加者の皆さまには、先生がおっしゃった、「楽しい絵本ライフを送ってください。」の言葉の通り、自由に楽しく、ご家庭での読み聞かせを楽しんで頂けることを願っています。図書館には、新旧問わず、たくさんの本がありますので、ぜひまたお越しくださいね。講師を務めて頂いた杉山先生、参加者の皆さま、ありがとうございました。
1月25日(土)、みんなのホールにて文筆家の甲斐みのりさんをゲストにお招きして読書推進トークイベント『暮らすように「すき」を楽しむ』を開催しました。
甲斐みのりさんは、日々、土地に根付くチャーミングな文化にときめき、『好き』を楽しみながら旅、散歩、お菓子、建築など様々なジャンルで執筆活動をされています。
ご両親が俳人で、子供のころ、お休みの日は家族で野山に出かけ俳句を詠まれる傍らでいつも図書館の本を読んでいました。ご両親からは感受性を大切に、失敗も経験することで価値を見出せるからまずは一度体験してみなさいといつも言われていたそうです。
そんな甲斐さんの最初の大きな挫折は大学生の時。自分と他人を比べ、自分は何もできていないと暗い気持ちでいたなかで、状況を変えるために始めたのが「好きノート」だそうです。このノートいっぱいの「すき」を集められたら、自分を変えられる、と暗示をかけ、ことばで「すき」をコレクションしていきました。にこにこと、楽しそうにすきなものに囲まれた暮らしについてお話しされる甲斐さん。いまでは悲しい時、寂しい時、孤独な時、いつもたくさんの好きなものが自分を支えてくれていると語る言葉が印象的で、会場にも終始あたたかい空気が流れていました。

「壁に抱きつきたいくらい好きな市民会館のタイル」「6時50分というオープン時間だけでもうときめくサカエパン」など岐阜のまちの「すき」もたくさん紹介してくださいました。『すきスイッチ』を押すといつもの街並みが輪郭を持ち、色づくように感じるそうです。ついつい日々の「やらねばならないこと」に忙殺され、余裕がなくなってしまう毎日ですが、「どんなところにも"好き"はある!」そう思うと今までよりも自分の暮らしを楽しめるような気がして、心が温かくなった時間でした。

令和7年1月26日(日)に、ぎふメディアコスモス1階のかんがえるスタジオにて、今年度の人権イベント「正しく知ろう、ヘルプマークのこと」を開催しました。講師に岐阜市障害者生活支援センター相談支援専門員の中村菜穂子さんをお招きし、見た目では分からない障がいと必要な配慮についてお話ししていただきました。

みなさんも商業施設や電車内などでヘルプマークを見かけることがあると思います。ヘルプマークは障がいがあることを示し、緊急時の対応方法や連絡先等を周囲に伝えることが出来るため、見た目では分からない障がいがある方にとって安心できるアイテムです。その一方で、ヘルプマークの存在は知っていても、見かけた際にどうすればよいのか分からない、という方もいらっしゃるのではないでしょうか。中村さんは今回の講演で、ヘルプマークは周囲に援助や配慮が必要であることを知らせるためのマークであり、見かけたら必ず助けなければいけないのではなく、助けを求められたとき、何か困っている様子だったときに手を差し伸べる気持ちを持つことが大切であると語られました。
そのほかにも、中村さん自身の下肢障がいの困りごとや車いす生活での不便さについて、写真を用いながら様々な想いを伝えてくださいました。また、講演会の最後には障がいをサポートする自助具の紹介もしていただき、大変有意義な時間となりました。

参加者の皆さんは質問をしたりメモを取るなど、熱心に耳を傾けていらっしゃいました。障がいの不便さや困りごとへの理解を深め、ヘルプマークに対する認識を改める良い機会となりました。
第10期2回目の夜学を令和6年12月13日に開催しました。中部地域の戦後前衛美術やアートプロジェクト等の調査・研究をしている高橋さんと、アーティスト集団「幻想工房」結成し「場所」をキーワードにアート活動する野村さんが、岐阜で芽吹いた前衛芸術の軌跡に注目します。
「アンデパンダン」(indépendant)とは「自主的な、自立した、独立した」意のフランス語。アートの世界では無審査・無賞で誰でも参加できる展覧会を指し、保守・伝統的なサロンに対抗して開催された落選者展が起源といわれています。
無審査なので出展者が「表現の自由」を体現できるということから、若者たちを中心に多くの美術グループが興り、昭和22(1947)年に日本ではじめて「日本アンデパンダン展」(日本美術会主催)が、その後「読売アンデパンダン展」(読売新聞社主催)も開かれました。しかし回を重ねるごとに作品が過激さを増し、収集がつかなくなり中止を余儀なくされます。
これを機に東京中心だった展覧会を地方でも!という機運が高まり、岐阜では西尾一三、石原ミチオらが中心にVAVAという前衛芸術団体をつくり、「岐阜アンデパンダン」を自主展覧会として計画しました。
VAVAのメンバーは医者や公務員などで構成されていたことからスポンサー集めや会場使用の交渉、参加者へのケアなどをメンバーが得意を活かしてマネジメントをしました。政治・経済・民衆と芸術と場所がそれぞれうまく融合できていたことからまさに「共存と受容の思考」が体現された展覧会だったと高橋さんは指摘しています。
全国から「無審査」で多くの参加者が集い、長良川河畔や金公園、市民センターなどを会場に思い思いの前衛芸術を体現し楽しむ姿がありました。
保守が強いといわれる岐阜で前衛芸術の祭典が開催されていたこと、それをおおらかに見守る岐阜人の懐の深さは、いまも新しいことに挑戦しやすい土壌に受け継がれていることにうれしさを感じる夜でした。
後日おとなの夜学ホームページにてイベントの様子を記録した動画がアップ予定です。気になる方はぜひ動画をチェックしてみてくださいね。
おとなの夜Youtubeページ(別のページに移動します)

12月14日(土)、21日(土)に、長良川大学・朗読教室「なみ悟朗さんと楽しく朗読しよう!」を
開催しました。講師には、昨年に引き続き、劇団はぐるまでご活躍されているなみ悟朗さんをお招きしました。

今回朗読したのは、工藤直子さんの童話『ともだちは緑のにおい』(理論社、1988年)より、
「朝の光のなかで」、「おでこ」、「風になる」です。
第1回目は、まず、体のストレッチをしたり、「発声」の仕組みについて改めて考えてみたり。
朗読をするための基礎について教えていただきました。
第2回目は、本文を数行ずつ声に出して読み、なみさんにどうしたらより良い朗読になるかを1人ずつ指導していただきました。

なみさんが今回の朗読教室で何度も仰っていたのは、「朗読は"イメージすること"が大事」ということです。「この物語の舞台はどんな場所?」「自分が登場人物だったらどのようにこのセリフを言うだろう?」など、常にイメージしながら読むことが朗読の第一歩なのだそう。
朗読とは、ただ文章を読めばいいのではなく、物語の世界を理解して、自分なりに表現することが大切なのだと改めて感じました。
今回参加していただいた方の中には、普段から朗読や読み聞かせをしている方や、朗読は初心者の方もいらっしゃいましたが、みなさん楽しそうに朗読に挑戦してくださっていたのが印象的でした。
参加してくださった皆さん、講師のなみさん、本当にありがとうございました!
11月13日(水)、20日(水)、27日(水)に、朗読教室「前田幸子先生と楽しく朗読しよう!」を開催しました。講師の前田先生は、元岐阜放送のアナウンサーで、毎年、朗読教室を担当していただいています。

今回は、青山美智子さんの短編集『月曜日の抹茶カフェ』(宝島社刊)より、「抜け巻探し」を朗読しました。京都の「下鴨納涼古本まつり」が舞台のおはなしです。
はじめに全員で声に出して読み、話の概要が分かったところで、話の後半をメインに具体的に読み方を指導していただきました。朗読には間の取り方、アクセント、イントネーション、声の高さ低さ加減、読み方の緩急などテクニックは色々あるのですが、「上手く読もうとせず、心で読むことが大事」だと教えていただきました。
3回目は、4つのグループに分かれて、発表をしました。それぞれのグループの個性が出ていて、素晴らしかったです。3回の講座で、こんなに上達されるとは驚きでした。
終了後のアンケートには、先生が明るくて、指導もわかりやすく楽しかったという声が多かったです。そして、今回初めて青山美智子さんの作品を知って、この本を全編読んで、読書生活が広がったと書いてくださった方もいました。司書として、とても嬉しいお言葉をいただきました。
参加してくださった皆さん、前田先生、ありがとうございました。
12月1日(日)、まちライブラリアン養成講座の選書ワークショップ、「とある一冊の本」をシビックプライドライブラリーで開催しました。講師の市川さんは、2022年よりいままでなかった新しい選書サービス「とある一冊の本」をオンラインでスタートし、新聞・ラジオ・テレビなどのメディアにも多数取り上げられています。今回は普段、市川さんがオンラインでされている「名前だけを手掛かりにする選書」を参加者の皆さんと体験しました。今日という日に偶然同じワークショップに参加したみなさんは会場に入られてすぐ、まず自分の名前を手書きで小さなカードに書いていただきました。手書きには、文字や書き方にその「人」が出るのだと、市川さんは言います。

市川さんから一人ずつ、自分が選書をする方の名前が書いたカードを手渡され、本を選びに館内へ。相手の、生まれてからずっと一緒にいる「名前」だけを手掛かりに30分間で本を選びます。みなさん迷いながら何度も名前が書いたカードを眺めたり、名前の意味を調べてみたり。手に取った本とじっくり見比べながら選ぶことを楽しんでいるようでした。中央図書館の50万冊超の蔵書からなかなか「これ!」という一冊だけを見つけるのは難しかったようで、ほとんどの方が2冊、3冊と選んで戻ってこられました。
全員が戻ってきたところで、円になって「どうやって選んだ本なのか」を共有。
「名前の響きが優しくて暖かいイメージだったので...」
「雪→北海道→シマエナガと連想ゲームのように発想を広げて...」
「字体がカクカクしてまじめな感じ。きっとこの方はコツコツやってきたんだろうなと思った」
などそれぞれ選んだ本への思いを語られ、最後に選んだ相手に本を手渡します。一生懸命思いを巡らせ選んでもらった本を手にした参加者のみなさんのうれしそうな顔が心に残りました。

普段自分ではいかない棚の、新しい本との出会いを楽しまれた方、「自分の名前にそういう意味があったとは!」と驚かれる方、「気になっていた本だったんです!」と喜びをあふれさせる方など会場内には本と名前に引き寄せられた偶然の出会いを楽しんだ方々の静かな興奮が感じられました。本を通じてつながった縁に思いをはせた、濃い時間となりました。ご参加いただいた皆様、ありがとうございました!