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 知らなかった岐阜を知る「みんなの図書館 おとなの夜学」。第8期4回目を令和5年3月8日に開催しました。
 岐阜市内を通る「御鮨街道」は尾張藩が長良川・小瀬の鵜飼で獲った鮎を熟れ鮨に加工し徳川幕府に献上した道のり。徳川家康がその味に惚れ込み毎年お取り寄せしてきたその味の秘密に、漁師と研究家が迫ります。

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「熟れ鮨」とは魚をご飯に漬けて乳酸発酵させたもの。はじめに川漁師の平工さんに鮎熟れ鮨の作り方について解説していただきました。
 産卵間近の秋の錆鮎を塩漬にし、塩抜きした後内臓を取除いて腹に炊いたご飯を入れて樽に敷き詰めます。その上にさらに水で濡らしたご飯で覆います。これを約30日間重石にかけて発酵させると出来上がりです。家ごとに道具の形、塩抜きの塩梅が異なり、平工さんも試行錯誤しているそう。この鮎の熟れ鮨、今は冬に30日かけて作りますが、江戸時代は夏に5日間で作っていたそうです。

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 続いて郷土料理研究家の日比野さんが「すし」の歴史を紐解きます。「すし」は東南アジア発祥とされ、日本に渡ってきたのは700年頃。元は保存を目的とした調理法を指し、発酵に使った米は捨て魚だけ食べていたそうです。
 江戸期の鮎熟れ鮨の製法は岐阜市歴史博物館所蔵の「長良川鮎鮨図」に描かれています。絵を見ていくと作り方は現在とほとんど同じでした。昔と現代との違い、それは熟れ鮨を作る時期と期間のようです。

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 家康の時代と今とでは、気候、環境、食材の鮎や米の時期、味付け、そして「美味しい」と感じる価値観が異なります。鮎熟れ鮨は岐阜の夏の味として「美味しい」と思っていたからこそ、江戸幕府が続いていた300年間ずっと献上され続けてていたのではないか?漁師と研究家の推理は尽きず、続きは次にとすることで一旦閉幕しました。

※諸事情により出演者が変更となりました

3/4(土)中央図書館シビックプライドライブラリーにて、
「ウチのコトはジブンのコト?!~家事をシェアしよう~」を開催しました。

 大人から子どもまで幅広い世代に食育を届ける「ほっぺの会」の伊藤惠さんを講師として、
家事(ウチのコト)とは何かを考え交流しました。

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パワフルな伊藤さんに触発され、参加者がそれぞれの考える、感じている家事についてたくさんの
意見がでました。

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それぞれに思う家事は、種類も量も違いましたが、まとめると、家事とは生きる力を養うことでした。
親や子ども、そして、パートナーと一緒に、できることは何か、できないことは何か。
得意なことは?苦手なことは?いろんな疑問を話し合い、生きていくための技術をシェアしあいましょう。

 

 知らなかった岐阜を知る「みんなの図書館 おとなの夜学」。第8期3回目を令和5年2月13日シビックプライドライブラリーで開催しました。
 金沢といえば「加賀百万石」の城下町であり、北陸新幹線と21世紀美術館など観光でも注目の都市。現在の「金沢ブランド」を築き上げた山出 保・元金沢市長と共にまちづくりに関わってきたゲストのお二人から金沢の取り組みを学び、「岐阜らしさ」とは何かを一緒に考えます。

 はじめに浦さんから金沢の歴史と成り立ちを聞きました。金沢は江戸時代から始まった比較的新しい街。太平洋戦争時は空爆を逃れたことで昔ながらの風景が多く残ります。1987年の景観とラスト運動からは特に景観を守る市の条例が多く出されるなど行政・市民共に景観に対しての意識が高く、古いものを大切にした上で新しい時代にも合う創造性を伸ばす政策が、現在の金沢には続いているのです。

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 内田さんは研究者として「らしさ」とは何かを分析していきました。「らしさ」にはオーセンティシティ(真正性・本物)があり、「客観的」「社会的」「個性的」と3つの種類に分類しました。さらに「らしさ」の価値観は時間とともに変化していくものであり、人々に受け入れられる過程が必要だそうです。「らしさ」の価値が本物ならば、ゆらぎ(価値観の変化)を恐れず、なじみ(時間経過)を待つことが大事であることを教えてくださいました。

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 最後に、吉成総合プロデューサーと司会の蒲さんも入り「岐阜らしさ」について会場を意見交換が行われました。金沢は21世紀美術館が金沢にゆらぎを与え、今は「金沢らしさ」としてなじんでいます。岐阜ではぎふメディアコスモスが出来、すでに市民になじんでいます。これからの「岐阜」をどうしていきたいのか、私たちが暮らすこの街について改めて考える機会となりました。

おとなの夜学 第45夜 世界都市金沢に学び語る「岐阜らしさとは何か」動画
https://www.youtube.com/watch?v=CHWrd9zQVb0

 1月28日(土)、別冊ほんまるけ編集委員会・第2回を開催しました。
 今年は本を1人2冊ずつ紹介することになった「別冊ほんまるけ Vol.10」。1回目に引き続き集まった3人の編集委員が、協力しながらオンリーワンの「別冊ほんまるけ」を作り上げました。


 今回は2回目ということで、みなさんリラックスした様子でおしゃべりをしながら作業に取り組んでいました。「時間がない~」「色使いに迷う......」などと悩みながらも工夫してページを彩っていく様子はとても楽しそうでした。冊子全体の雰囲気を決める際には進んでアイデアを出し合い、納得いくものを作ろうとしていました。
 紹介したい本の面白かったポイントを語る姿が印象的で、誰かに話さずにはいられないほど魅力的な本であることが伝わってきました。きっと大切な宝物になるような作品に出会えたのだと思うと、私たちも嬉しくなりました。
 文章もデザインも情熱が込められた「別冊ほんまるけ Vol.10」は、2023年6月に発行予定です!IMG_2320_s.JPG

 今年編集に参加できなかった方、新たに興味を持たれた方は、いままでに発行された「別冊ほんまるけ」をぜひ読んでみてください!⇒過去の別冊ほんまるけはこちら

 1月23日(月)と1月30日(月)に、長良川大学講座「読み聞かせ教室」を開催しました。
ご家庭での読み聞かせについて、講義と実践で学ぶ二回連続講座。
昨年はZoomにて一回目のみ行われた本教室ですが、今回は現地での開催となり、
二日間の日程をフルに活用して実施されました。


 今回、講師としてお招きしたのは、東海学院大学短期大学部教授・杉山喜美恵先生です。
昨年はモニター越しにお話を聞かせてくださった杉山先生も、今回は生身でのご登壇!意欲もあらわに聞き入る親子の皆さんの前で、身振り手振りも大きく楽しげに、昨年に増していきいきと語ってくださいました。
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 「読み聞かせ」を行うにあたって、考え事は尽きません。例えば絵本の選び方、読み方。
読み手と聞き手の適切な体勢、破る・次々めくる等といった絵本の扱い。
そんな中、先生のお話で心に残ったのは、「子どもの『静』と『動』のタイミングを見極める」という言葉です。
 幼い子どもは特に、自分にとって楽しいこと、やりたいことを優先させがちです。体を使って動きたい「動」の気分のときに、「おとなしくお話を聞いて」と「静」の状態へ誘導されても、なかなか興味を示してはくれません。むしろ、行動を強制されることで、絵本について「いやなもの」と印象づいてしまう可能性もあります。
 逆に、「ちょっと疲れたな」「静かにしていたいな」という気分のときには、外から提供される娯楽である「読み聞かせ」をすんなり楽しんでくれる場合が多くあります。 
 絵本とのかかわりの大前提は、「とにかく楽しむ・楽しいものであること」。
子どもが絵本を楽しめる状態になるタイミングをはかり、読み手も聞き手も楽しい読み聞かせを実現することが大切であるとのお話を、とても印象深く聞かせていただきました。

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 1年ぶりの現地開催となった本教室。参加者の皆さんも、先生と一緒になって声を出したり、質問をしたりと、とても積極的に講義や実践に取り組んでいらっしゃいました。
楽しくためになる講座をしてくださった杉山先生、参加してくださった皆さん、ありがとうございました。

 1月14日(土)、別冊ほんまるけ編集委員会・第1回を開催しました。

 年に一度、YAの皆さんと協力して作成している、YAの、YAによる、YAのためのおすすめ本リスト「別冊ほんまるけ」も、今年でVol.10!

 節目の今回、「Go for it! ~やってみよう!~」のテーマのもとに、おすすめの2冊を携えた編集委員が集まりました。

「お気に入りの本をぜひともおすすめしたい!」とやってきてくれた中学生3名。
自己紹介では少しだけ緊張した様子でしたが、本の話となると表情が一変。目を輝かせて自分の推し本をいきいきと語り、紹介文を考え、素晴らしい集中力で筆を走らせていました。私たち司書も、本語りとあらば黙ってはいられないとばかりに、最近読んだ本などについてYAの皆さんと語り合いました。

 今回でvol.10と節目のほんまるけ。どんな素敵な冊子になるのか、完成が楽しみです!編集委員会の2回目も、一緒にがんばりましょう!
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編集委員の募集は終了していますが、ほんまるけへの参加チャンスはまだまだありますよ!

というのも、ほんまるけの表紙を飾るイラストを大募集中なのです!

 編集委員会には都合がつかなくて参加できなかったという方も、この機会にちょっとほんまるけに関わってみたいという方も、ぜひ奮ってご応募を!詳細はこちらのページをご確認ください。皆さんの熱いイラスト、おまちしております!

 

 1月8日(日)みんなのホールにて、作家の小川糸さんをお招きして「読書推進トークイベント 日常の中にある豊かな暮らし」を開催しました。聞き役はぎふメディアコスモスの吉成信夫総合プロデューサーです。吉成総合プロデューサーが岩手でつくった「森と風のがっこう」に糸さんが訪問されるなど以前から親交のあったお二人。なごやかな雰囲気のなか、おはなしがはずみました。
 まずはどんな環境のなかで小川糸さんの作品は生まれてきたのか、「暮らし」に焦点を当ててお話を伺います。水と空気がきれいな場所に身を置きたい、という思いから昨年長野県に山小屋を立て、そこで新しい暮らしを始めた糸さん。人が暮らせるギリギリという標高1600メートルでの暮らしについて、語ってくださいました。

 夜、道路で寝転んで星を見る幸せや、人生初めての薪ストーブを使っての暮らし。今はいろいろなことを石橋をたたきながら、なにができるのかやってみている「おためし期間」なのだそうです。山での暮らしをはずむように語る糸さんは「ウキウキ」「ルンルン」といった言葉がぴったりで、新しいことを知ったり、できることが増えてちょっとずつ成長していく自分がうれしい、と本当に暮らしのなかの一つ一つを楽しんでいるようでした。

 また、山での暮らしを始める以前は、ドイツのベルリンで3年ほど生活されていました。毎年夏だけ行く生活を続けて10年くらいたったころ、もっと深く知りたい、作家はどこにいてもできる、という思いでベルリン生活を始めたそうです。ベルリンは「住んでみたらとても"楽"な場所だったんです」と語る糸さん。暮らしの中に息づいている「もったいない」「おかげさま」の精神があり、そこに暮らす人はどんなことも楽しみながら工夫しているそうです。日々の暮らしの中から遊びながら、「楽しいから」「そのほうが気持ちがいいから」やっている感じがいいんですよねえとのびやかに語られる姿が印象的でした。

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トークの後半は糸さんがそんな環境で紡がれてきた作品への思いや、「書く」ことに対する原点について、うかがいました。

本屋大賞にノミネートされた「ライオンのおやつ」は瀬戸内の大三島(おおみしま)がモデルになっています。瀬戸内の海は穏やかだけど実は流れが激しくて、そのさまが死と近くにあるひとの穏やかではないだろう心情や感情と通じる部分があるような気がして、瀬戸内の海を作品の舞台に選ばれたそうです。この作品で暗い、痛いだけではない「死」を描きたかった、という糸さん。 
 プロデューサーが、「"おやつ"という言葉には幸せと結びついている記憶がありますよね」、というと、糸さんも「"おやつ"は「食事」と違って笑い声や優しさと一緒にあって、自分の人生にこんな幸せな場面があった、と最後に自分の人生を肯定できるような気がして」、とこの題材を選ばれた理由を語ってくださいました。どんなに死が近くにあっても生きている限りやり直せるし、終わっていない、という糸さん。生きること、死ぬことどちらも自分の意志でどうにもならないことがあり、時に恐怖を感じることもありますが、そんな『得体の知れない恐怖』を『だいじょうぶ』に変えてくれるのが、小川糸さんの物語のような気がするのです。

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 糸さんの『書く』ことの原点は子どもの頃から日記に創作の物語を書いていたこと。本に携わる仕事につきたいと思いながらも10年くらいは真っ暗なトンネルの中にいるような状況が続いたこと、これがだめならあきらめよう、という思いで書いた作品がデビュー作の『食堂かたつむり』だったこと。うれしい、楽しいだけでは成り立たない、ままならない感情や状況の中にも喜びを見つけていけたら、と思って作品を書いている、という言葉には、作品の一読者として、「そうそう、そんな作品の主人公たちと励まし合いながら私もがんばってきたんです」という思いで大きくうなずきながらお話を聞いていました。

 会場やZoom観覧のお客さんからの質問にもたくさん答えてくださいました。なかでも印象に残ったのは、子どもたちに送った言葉です。
「糸さんが今まで読んだ本で、これは読んだほうがいいと私たちにおすすめする本は?」という子どもからの問いには、"これ"という一冊の"これ"は一生をかけて一冊と出会えれば十分だと思うので、そんな出会いをするために読書を続けるのかな、と思います。」と、また、子どもたち、未来を創っていく人へ伝えたいことは?という問いには「自由というのは当たり前にあるものではなく意識をして守っていかないといけないもの。自分の自由を守るために具体的に行動して」と強いメッセージを送ってくださいました。

 凛としていて、でも終始やわらかなトーンと雰囲気で言葉を選びながら大切にお話してくださる糸さんのお話は大変興味深く、新しい年の始まりに心が晴れるような、すがすがしい気持ちになれた時間でした。

ご参加いただいたみなさま、ありがとうございました!
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 この夏に養成講座を受講した子ども司書8期生と吉成信夫ぎふメディアコスモス総合プロデューサー(Pさん)との<ヒミツ会議>が11月27日(日)に行われました。その名の通り、詳細 8期生とPさんだけの「ヒミツ」なのですが、今日は特別にその様子を少しだけご紹介いたします。

 子ども司書の主な活動のひとつに、ラジオ番組作りがあります。市民ラジオ<てにておラジオ>のなかに「小さな司書のラジオ局」という子ども司書の番組があり、2016年から毎月企画会議でのネタ出し、取材、原稿づくりに収録と番組作りをすべて、彼ら自身が主体となって行ってきました。〈ヒミツ会議〉は来月からこのラジオ作りに参加していく8期生とPさんの作戦会議のようなものです。
 まずは、アイスブレイク!じゃんけん列車と瞬間劇場をやりました。瞬間劇場は、 "銀行強盗"、"バーゲンセール"など、Pさんが出すお題に合わせて一瞬で登場人物になりきり、全員でその場面を作りあげるコミュニケーションゲーム。とても盛り上がりました!
 みんなで体を動かして思いっきり笑った後は実際に放送されるラジオ番組を作っていくうえで大切なことと、ラジオ作りの流れをPさんとおとな司書が話しました。最後にラジオのテーマでやってみたいことを出し合ったら、みんなからアイデアがどんどん出てきて驚きました。やる気いっぱいの8期生、一緒に企画会議をするのが楽しみです。
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 その頃、別室では4期生から7期生までの子ども司書7人が集まってラジオ収録に向けた最終準備!1週間前の企画会議で決まったテーマは『クリスマス』と『子ども司書の思い出』の2つ。
クリスマスチームは「サンタさんはいるのか?いないのか?論争」(子ども司書の間でも意見がわかれました)やクリスマスのそれぞれの家庭の過ごし方、ちょっとショックだったクリスマスの事件について...チームワークもよく、楽しいトークになりました。子ども司書の思い出チームは、それぞれの「子ども司書になりたい!」と思ったきっかけやこれまで取り上げたラジオのテーマで印象に残っているエピソードなどをそれぞれ振り返りました。
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 どちらのチームも収録に来れなくなってしまった子がいてメンバーの変更や原稿の書き直しがあり、直前まで「時間足らなかったらこのエピソードもいれようか?!」と案を出しあって練習していました。そのかいあって、お客さんにもたくさん笑ってもらえる楽しい番組になりました。8期生は収録を見てどんなことを感じたでしょうか。この日収録した放送は、FMわっち(78.5MHz)でお聞きいただけます。
 子どもラジオは決まっていることは何もありません。何を、どうやるか、すべては子どもたち次第!来月からは8期生も一緒になって、わくわくする体験をしていけたら、と思っています。
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みんなの森ぎふメディアコスモス はLibrary of the Year2022において、大賞を受賞しました。

優秀賞を受賞した4館の中から大賞を決める最終選考会が2022年11月30日に開催され、厳正な審査の結果、大賞をいただくことができました。

「ここにいることが気持ちいい」
「ずっとここにいたくなる」
「何度でも来てみたくなる」
を合言葉に、本や人との偶然の出会いがあったり、本をまん中に人がコミュニケートできる、誰もが生き生きとした表情に満ちた場所を目指してきた私たちにとって、とても嬉しい賞です。
これからも市民のみなさまにとっての「居心地のいい場所」となれるように、精進していきたいと思います。
ありがとうございました。

吉成信夫(みんなの森 ぎふメディアコスモス 総合プロデューサー)よりコメント
ライブラリーオブザイヤー2022大賞を受賞して ープロデューサー'sブログ

○Library of the Yearとは
 これからの図書館のあり方を示唆するような先進的な活動を行っている機関に対して、NPO法人知的資源イニシアティブ(IRI)が毎年授与しています。

○みんなの森 ぎふメディアコスモス 授賞理由
 中心市街地に位置する「知・文化・絆の拠点」の建物と機能が「子どもの声は未来の声」という理念のもと、見事に融和する。「子ども司書養成講座」「おとなの夜学」等に加え、新たにまちの誇りを育む「シビックプライドライブラリー」を6年目から、地域情報のシンボルエリア「シビックプライドプレイス」を7年目から展開し、地域の魅力と可能性を掘り起こしている。市民と共に成長する複合文化施設のモデルとして高く評価する。


○優秀賞受賞館
 ・津山市立図書館(岡山県津山市)
 ・西ノ島町コミュニティ図書館「いかあ屋」(島根県隠岐郡西ノ島町)
 ・みんなの森 ぎふメディアコスモス(岐阜県岐阜市)
 ・大和市文化創造拠点シリウス(神奈川県大和市)

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 知らなかった岐阜を知る「みんなの図書館 おとなの夜学」。第8期2回目を令和4年10月19日シビックプライドライブラリーで開催しました。テーマは「 岐阜復興期の新聞・出版群像 ―メディアでたどる戦後岐阜―」です。
 戦後の岐阜を生きた知られざる出版人たちを紹介されるのは岐阜放送の社長である山本さんと、「東海民報」の林さん。敗戦後、人々の日本を変えたいという政治への熱はそのまま出版活動への意欲につながり、多くの新聞・雑誌が生まれました。

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 山本さんは岐阜復興期の出版状況についてプランゲ文庫(*1)などを参考に調べられていますが、興味を持った入り口はカストリ雑誌(*2)でした。岐阜で有名だったのは戦後の柳ヶ瀬にあった石神書店です。石神書店ではすぐ儲かるからと性を売り物にした単行本や雑誌を発行する一方で、青年向けの健全な新聞も発行していました。
玉石混交の出版物があふれる時代において、岐阜のジャーナリズムは今よりも活発的で大きな流れを築いていました。
 当時、乱立していた新聞や発行物の中で今日もなお岐阜で健在なのがローカルメディア「東海民報」です。発行人である林さんは先代編集者だった父親が「立派なことを言っても続かないと意味がない」と経営面もおろそかにせずに新聞を続けていく姿に感銘を受け、跡を継ぎました。岐阜や柳ヶ瀬の様子など、私たちに馴染みのある話題と関連付けながら当時の出版世相を語られました。
個人が自由に情報を発信できる現代の状況に触れながら、ジャーナリズムや地方のメディアが担うべき役割について林さんは問題提起をしており、考えを深めるきっかけの時間となりました。

*1 プランゲ文庫 国立国会図書館が1948年にできるまで、戦後の日本で発行された出版物を集めていた歴史学者ゴードン博士によるコレクション。原本はアメリカにありますが、国立国会図書館のデジタルアーカイブから見ることができます。保管されている岐阜の新聞は147紙、雑誌は85冊に渡ります。

*2 カストリ雑誌 戦後4、5年にわたって流行った大衆娯楽雑誌。扱う内容は性的なもの、グロテスクなもの、怪奇的なものなど多岐にわたり、度々摘発されました。内容が粗悪なことから3号以上続かない雑誌を意味していて、当時流行した3合も飲めば潰れるカストリ焼酎とかけているとされます。